神保町シアター

上映中の作品

「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.3
五所平之助と稲垣浩

※「原作」表記のない作品はオリジナル脚本によるものです。
※松竹作品は版権の都合上、スチール写真を掲載できません。ご了承ください。

1. マダムと女房

国産トーキー第1号として、映画史に残る名作。大げさな音の羅列ではなく、日常描写に徹したセンスが光る喜劇映画。

2. 花籠の歌

銀座のとんかつ屋を舞台に、看板娘と学生の恋を描く秀作喜劇。父親を演じる河村黎吉は松竹大船の看板役者だった。

3. 今ひとたびの

戦後の開放の時代を体現した恋愛映画の秀作。神宮外苑の絵画館前をランドマークに、星のめぐりの悪い恋人たちの歳月を綴る。

4. 黄色いからす

父が復員し、母親を独占できなくなった少年の孤独を、児童色彩心理学を援用して描いた、五所と名キャメラマン宮島の初のカラー作品。

5. 螢火

伏見の寺田屋を継いだ夫婦が「寺田屋事件」など幕末の事件を乗り越えていく。夭折した森美樹が坂本龍馬を好演した秀作。

6. からたち日記

信州の貧農の家から芸者に売られた娘の戦中戦後を描く。強面のスタッフ陣を見ればわかるように、島倉の歌謡映画ではない。

7. 雲がちぎれる時

四国南端の町を舞台に、婚約者のいるバス運転手が初恋の人に再会したことから始まる恋愛ドラマ。倍賞千恵子の出世作でもある。
※ニュープリントで上映

8. 挽歌

舞台は釧路。妻ある男に魅かれた娘の心の軌跡を描く。ガリ版刷りの同人誌から発掘した原作をベストセラーにしたヒット作。
※16mmで上映

9. わが愛

五所の井上靖3部作のひとつで、有馬稲子の代表作。娘の頃から慕っていた男と暮らした3年で愛を燃焼し尽くした女の物語。

10. 白い牙

井上靖3部作は同時に、佐分利信の男のエゴイズム3部作でもあるのだが、ここでは暴君の父に反撥する娘の孤独な内面を描く。

11. 猟銃

豪華配役で描かれる姦通もので、親友の夫と関係を持った女が8年後に迎える破局を描く。山本と岡田の競演がみもの。

12. 恐山の女

下北半島の霊場を舞台に、関係した男たちが死んでいく娼婦を、土俗的な因習の中で描き出した力作。晩年の代表作である。

13. かあちゃんと11人の子ども

大正の末、14歳で嫁入りし、戦争を乗り越えて11人もの子宝に恵まれた夫婦の物語を、伊豆の農村を舞台に描いた感動篇。

14. 宴

やがて二・二六事件に参加することになる青年将校に愛を拒まれ、他家に嫁いだ女の哀しみを描くフェティッシュなメロドラマ。

15. 新道 (前篇朱実の巻・後篇良太の巻)

ブルジョア家庭の2人の娘の対照的な生き方を描き、新時代を謳い上げた恋愛映画の秀作。モダンな家具調度にも注目したい。
※16mmで上映

16. 伊豆の娘たち

国威発揚のタガが緩められた敗色濃厚の時代に作られた、のんびりとした恋愛ホームドラマ。名優河村黎吉の暢気な父親が最高だ。
※16mmで上映

17. わかれ雲

旅先で病に倒れた女子大生が、土地の人々との交流に心を洗われていく。信州オールロケで描いたさわやかな名作。初の独立プロ作品。
※16mmで上映

18. 朝の波紋

貿易会社の社長秘書と、ライバル会社の社員の恋愛を生き生きと描いた娯楽作。原作執筆前からの企画で、題名は五所が命名した。
※16mmで上映

19. 煙突の見える場所

巨大なお化け煙突が見下ろす下町を舞台に、戦後の混乱が影さす男女の悲喜劇をしみじみと描いた名作。戦後の代表作。
※16mmで上映

20. 大阪の宿

大阪に左遷された会社員が腰を落ち着けた旅館を舞台に、仲居ら様々な女たちの人間模様を描き、代表作のひとつとした名作。
※16mmで上映

21. 鶏はふたゝび鳴く

椎名麟三のオリジナル脚本。温泉試掘場の5人の労働者と風変わりな3人の娘の交流を描き、自身「好きな作品」と語る寓話。
※16mmで上映

22. 無法松の一生

純粋な心の荒くれ車夫・松五郎の、軍人の夫人へのほのかな思慕を抒情豊かに描いた映画史上の名作。阪妻も畢生の名演。

23. 手をつなぐ子等

知的障害を持つ天真爛漫な少年が、教師と学友たちに囲まれて成長していく名作。子どもを演出させて稲垣に勝るものはいない。

24. 忘れられた子等

前作の姉妹篇。特殊学級の担任になった教師が、やがて児童に心を開き、彼らとのかけがえのない時間を過ごす。心洗われる秀作。
※16mmで上映

25. 嵐

男手ひとつで4人の子どもを育て上げた大学教授の、静かな嵐のような生活記録。人情味あふれる、しみじみとした秀作。

26. 女体は哀しく

北条秀司による新派の名作の映画化で、京都島原遊廓の女たちの群像を豪華配役で描く。現地でロケした風景も今は貴重である。

27. 無法松の一生

オリジナル版が戦中戦後に2度の検閲禍にあったため、三船主演で再映画化し、見事ベネチア映画祭グランプリに輝いた作品。

28. ふんどし医者

大井川を舞台に、へそ曲がりだが滅法腕のいい蘭学医と、貞淑だが丁半博奕に目がない妻の歳月を、幕末の世相を交えて綴る。