神保町シアター

これまでの特集企画

「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.15
川本三郎編 昭和映画紀行 観光バスの行かない町

※作品解説=川本三郎
※ニュープリント=今回の上映のために新たに作成したプリントです。

1. 幻の馬

大映社長、永田雅一の持馬でダービーを制した名馬トキノミノルがモデル。青森県八戸のタイヘイ牧場でロケ。少年と馬が別れる駅は八戸線の種差【たねさし】駅。現在、東京競馬場にトキノミノルの像がある。
※16mmで上映

2. 思春の泉(再公開時に『草を刈る娘』に改題短縮)

石坂洋次郎の短篇「草を刈る娘」の映画化。馬の飼料になる草を刈る農家の人々を描く牧歌的な青春映画。原作の舞台は津軽だが映画は岩手県田頭村【でんとうむら】(現在は八幡平【はちまんたい】市)。
※16mmで上映

3. こころの山脈

安達太良【あだたら】山の麓、福島県本宮町(現在は市)の小学校で働くことになった女の先生と子供たちの交流。家族向きの映画を作りたいという思いで町の人々が製作。町民参加映画。

4. 浮草日記

悪徳興行師に騙された旅回りの一座が、解散を前に炭鉱町を訪れ、労働者のストに巻き込まれる。はじめは対立した両者の間に友情が。常磐炭鉱でロケ。無論、まだハワイアン・センターはない。

5. 地方記者

大手新聞の地方通信部(支局より小さい)で働く記者が多難な取材を経て成長してゆく。福島県いわき市でロケ。四倉【よつくら】海岸、久之浜【ひさのはま】、勿来【なこそ】発電所などが登場。

6. ともしび

『山びこ学校』の姉妹篇の趣き。貧しい農村の中学生たちと先生の交流を描く。栃木県の部屋村(現・藤岡町)でロケ。渡良瀬流水池【わたらせりゅうすいち】に近い低湿地の風景が珍しい。
※16mmで上映

7. わかれ雲

東京から甲州に遊びに来た女子大生が土地の人々の生活に心動かされてゆく。中央本線と小海線の分岐点、小淵沢駅とその周辺、八ケ岳山麓でロケ。
※16mmで上映

8. 越後つついし親不知おやしらず

越後の寒村から伏見の酒倉に杜氏として働きに出る男。留守の間に妻が。水上勉文学らしく日本海が暗い。筒石、親不知は新潟県の日本海沿いの地名。「おくのほそ道」にも登場する難所。

9. 千曲川絶唱

白血病に冒されたトラックの運転手と看護師の純愛。富山、新潟、信州千曲川でロケ。星由里子が乗る信越本線の列車を北大路欣也のトラックが追う場面は出色(柿崎駅付近)。

10. 黒い画集 ある遭難

北アルプスの鹿島槍ケ岳に登った三人のパーティのうち一人が遭難死。弟の死に不審を抱いた香川京子がリーダーの伊藤久哉に疑問を持つ。鹿島槍でロケ。

11. ペン偽らず 暴力の街

戦後の混乱期、ある地方都市で実際にあった事件。町を暴力で支配するボスに、新聞記者がペンでたちむかう。朝日新聞浦和支局がモデル。埼玉県本庄市でロケ。
※16mmで上映

12. 花のゆくえ

女学校時代の親友の、卒業後も続く友情。新珠三千代の日活入社第一作。後半の舞台は銚子。犬吠埼の燈台、銚子駅が登場。津島恵子と岡田英次のラブシーンは屏風ケ浦。
※16mmで上映

13. 鹿島灘の女

茨城県鹿島灘の漁村の若い男女は毎年霞ケ浦周辺の農村へ稲刈りの出稼ぎに行く。鹿島灘、銚子、潮来【いたこ】などでロケ。水郷の風景が素晴しい。
※ニュープリント

14. 青ヶ島の子供たち 女教師の記録

八丈島からさらに遠くにある青ヶ島(当時人口約400人)に赴任した先生、左幸子の奮闘記。さすがに青ヶ島ではなく八丈島でロケ。
※16mmで上映

15. ここに泉あり

昭和20年11月に結成された群馬交響楽団の苦闘の歴史。高崎をはじめ県下でロケ。分校の子供たちが「赤とんぼ」を歌う名場面は御巣鷹山に近い上野村。

16. 涙

木下惠介門下の川頭義郎の秀作。ハモニカ工場で働く美しい若尾文子の恋と結婚。木下惠介の故郷、浜松でロケされている。若尾文子が歩く砂丘は市最南端の中田島砂丘。
※16mmで上映

17. 白い魔魚

東京の大学に通う女子大生、有馬稲子が大学生の恋人、石浜朗と金持の中年男、上原謙のあいだを揺れ動く。彼女の実家は岐阜の老舗紙問屋。長良川沿いにある。

18. 旅路

平岩弓枝原作のNHK連続テレビ小説の映画化。鉄道員もの。三重県尾鷲【おわせ】で出会った仲代達矢と佐久間良子が結ばれ、北海道・函館本線の塩谷駅(小樽と余市の間)へと向かってゆく。

19. うみの琴

『五番町夕霧楼』に続く水上、田坂、佐久間の悲恋もの。「湖」は琵琶湖の奥の小さな余呉湖【よごこ】。湖の水をくぐらせ三味線や琴の糸を作る。糸くり娘たちの涙の湖でもある。

20. 月は上りぬ

奈良に住む美しい三人姉妹の物語。法隆寺、若草山、二月堂などの名所もさることながら地元の人が利用する鶴福商店街が。謡の場面は東大寺の塔頭のひとつ龍松院。
※16mmで上映

21. 初恋物語

東京で会社勤めする男が故郷に戻り、少年時代慕った元芸者と再会する。舞台は岡山県児島郡灘崎町(現在、岡山市南区)。町並みと浜辺が美しい。列車は宇野線。

22. 大阪の宿

東京本社から大阪支社に左遷された独身会社員の物語。原作は大正末だが映画は製作当時に。堂島川、土佐堀川など「水の都」といわれた大阪がとらえられている。
※16mmで上映

23. 何故彼女等はそうなったか

香川県丸亀市に原作者が設立した、非行少女の更生施設を舞台に、少女たちの悲しみを描く。地方ロケが好きだった監督らしく丸亀で撮影されている。
※16mmで上映

24. 大番

御存知、牛【ぎゅう】ちゃんが東京に出て株屋として活躍してゆく一代記。牛ちゃんは愛媛県宇和島の貧しい農家に生まれた。山の上まで耕された宇和島の農村風景が目を惹く。

25. 南の風と波

四国の漁師町と大阪を結ぶ貨物船が強い風で遭難。残された遺族たちが苦難を乗り越えて生きてゆく。舞台は明示されていないが高知県の足摺岬近く。ただロケは、南房総でされている。

26. 南国土佐を後にして

大ヒット曲から生まれたアクション映画。刑務所帰りの賭博の天才が、高知に帰り恋人に手を出すやくざと戦う。ペギー葉山が特別出演。映画もヒット。

27. 海流

台風で沈んだ貨物船の通信長、大木実が沖縄に漂着し、麻薬の密輸に巻き込まれる。作品的にはいまひとつだが、戦後初の沖縄ロケ作品として貴重。

28. 旅愁の都

大阪で働く建築家の宝田明が料亭の設計を頼まれ沖縄へ。そこで過去のある星由里子と愛し合う。ひめゆりの塔、守礼之門、それに沖縄で作られているオリオン・ビールが登場。