神保町シアター

これまでの特集企画

「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.17
日本文芸散歩

※ニュープリント=今回の上映のために新たに作成したプリントです。


1. 樋口一葉

吉原大門前に逼塞する一葉が、「たけくらべ」の美登利を始めとした後の作中人物と交流する。伝記と物語が自在に交錯する傑作文芸映画。

2. 嵐

フランスから帰国した文学者が、子供たちを呼び寄せ、新たな生活を開始する。男手ひとつで4人の子を育て上げた日々を綴る秀作。

3. 雑居家族

貰い子たちを育て上げた、壷井栄の自伝的小説の映画化。小豆島から身を起こし、作家として成功した女家長の奮戦の日々は続く。
※16mmで上映

4. 愛妻記

昭和7年頃の早稲田界隈を舞台に、貧しい小説家の新婚生活を描く楽しい作品。私小説家尾崎一雄が新妻を讃えた「芳兵衛物語」の映画化。

5. 娘と私

フランス人の妻に先立たれ、一人娘と暮らす作家はやがて再婚する。NHK朝のテレビ小説第一作にもなった獅子文六の自伝小説の映画化。

6. 智恵子抄

高村光太郎と妻智恵子の有名な実話を、格調高い演出で映画化。芥川比呂志の詩の朗読も秀逸。米アカデミー賞にノミネートされた。

7. 甘い秘密

徳田秋声が女流作家山田順子との関係を綴った原作を、現代に置き換えて映画化。男性遍歴を続ける、作家志望の美貌の才女を描く。

8. 雨情

後に日本を代表する童謡詩人となる野口雨情の半生を描く。茨城の名家に生れながら、詩作以外に何の取り柄もない男を森繁が演じる。

9. おとうと

露伴の娘、幸田文の自伝的小説の映画化で、姉と弟の絆を描く市川崑の名作。名手宮川一夫のキャメラ、充実した演技陣もすばらしい。

10. 青べか物語

生活に疲れ、浦安(劇中では浦粕)の漁師町を訪れた文士が出会う様々な人々。川島作品中、ひときわ抒情的な逸品。押えた演技の森繁もいい。
※ニュープリント

11. 台所太平記

時代とともに女中からお手伝いさんに。高名な作家の家で働く、代々の家政婦たちの群像を綴る。中でも淡路恵子の怪演が笑える。

12. 斜陽のおもかげ

「斜陽」のモデルとなった母と暮らす、太宰治の遺児の多感な青春を描く。後半の津軽の旅が感動的。檀一雄が本人役で出演している。

13. わが恋わが歌

歌人吉野秀雄の戦中戦後の波瀾万丈の家庭史を、鎌倉アカデミアで師事した山口瞳らの交流とともに描く。実名で描かれる戦後文壇の一断面。

14. 火宅の人

檀一雄の自伝小説をパワフルに映画化。家庭を持ちながら、魂の命ずるままに漂泊を続ける無頼派作家の半生を、緒形拳が熱演する。

15. 帰郷

戦争中、外地で軍籍を剥奪された男が、敗戦後、帰国を果たす。運命を甘受する硬骨漢の目を通して、戦後日本が描かれる社会派メロドラマ。

16. 恋文

復員して渋谷でラブレターの代筆業を始めた男の前に、思いを寄せていた女が現れる。田中絹代の初監督を祝して、スター俳優が大挙出演。
※16mmで上映

17. 東京の人 前後篇

互いの連れ子とともに会社社長と事実婚している宝石デザイナーをヒロインに、彼女の大人の愛の行方を描く。豪華配役の文芸大作。
※16mmで上映

18. 珍品堂主人

美食家で骨董の目利きの珍品堂が、実業家から料亭経営を任される。欲得づくの世界で奮闘する芸術家肌の男を、森繁が絶妙に演じる。

19. 秋津温泉

岡田茉莉子が自ら企画し、女優賞を独占した名作メロドラマ。岡山の山あいの宿を守る女と、東京で俗物化していく男の愛の年月を綴る。

20. 喜劇 とんかつ一代

上野の名人気質のとんかつ屋を中心に、師匠の名コック、クロレラを研究する発明家など、川島らしい奇矯な人々が奏でる傑作人情喜劇。

21. あ・うん

戦前の東京山の手を舞台に、大人の友情と恋の微妙な関係を描く。17年ぶりに銀幕復帰した富司の、高倉健との共演が話題となった。

22. 足摺岬

軍部台頭の「暗い谷間」を背景に、本郷の下宿に暮らす苦学生の青春を描く。吉村監督自身の若き日の体験も織り込んだ渾身の一作。
※16mmで上映

23. 永すぎた春

本郷の古本屋の娘とブルジョア大学生が婚約、結婚までの清い交際を誓う。新しい時代の息吹を描き、新進脚本家白坂が一躍注目された。

24. われらの時代

娼婦に養われる東大生の兄は留学を目指し、ジャズメンの弟は政府要人の暗殺計画に加わる。故郷を捨て対照的な青春を送る兄弟を描く。

25. 偽大学生

学生運動に狂奔する青春群像を描く力作。受験に失敗した男が新入生と偽って運動に加わるが…。『日本の夜と霧』の一日前に封切られた。

26. 日本の夜と霧

安保闘争で結ばれた男女の結婚式を通して、戦後の左翼運動の内なる敵を暴く。上映4日で打ち切られ、大島は松竹から抗議の退社をした。

27. 日本春歌考

受験で上京した高校生たちが、試験のあと東京をさまよい、黒い日の丸を掲げたデモ隊に遭遇する。雪の東京を捉えた撮影が素晴らしい。

28. ぜったい多数

東京オリンピックのころ、郊外の下宿に住む女子大生が、渋谷の歌声喫茶に就職する。経済成長の片隅に生きる若者たちの喪失感を描く。