神保町シアター

S32('57)／東京映画／白黒／スタンダード／1時間57分

■監督：久松静児■原作：時雨音羽■脚本：八木隆一郎、高岩肇■撮影：中井朝一■音楽：古関裕而■美術：小島基司■出演：森繁久彌、木暮実千代、草笛光子、千秋実、扇千景、岩崎加根子

「七つの子」などで知られる童謡作家・野口雨情の半生を描いた抒情篇。実家の窮状を助けるために資産家の娘と結婚した雨情は、秘かに恋仲であった芸者を追いかけて家を出るが…。天才ゆえの寂寥感をまとった雨情役の森繁が絶品。

S14('39)／東宝東京／白黒／スタンダード／1時間23分

■監督：並木鏡太郎■脚本：八住利雄■撮影：伊藤武夫■音楽：菅原明朗■美術：久保一雄■出演：山田五十鈴、高峰秀子、高田稔、堤真佐子、英百合子、嵯峨善兵

日本文学史に数々の名作を残した樋口一葉が苦難の末、小説に命を注ぐまでの半生を綴る。『たけくらべ』や『十三夜』の作品世界も織りまぜられ、短くも芯の通った女性の生涯に胸を打たれる。山田五十鈴の名演、明治の町並みを再現した美術も見事。

H3('91)／東映／カラー／ヴィスタ／2時間3分

■監督：澤井信一郎■脚本：笠原和夫、桂千穂■撮影：仙元誠三■音楽：久石譲■美術：井川徳道■出演：柴田恭兵、榎木孝明、仲村トオル、南野陽子、若村麻由美、野村宏伸、哀川翔

『学問のすゝめ』を著し、慶応義塾を興した幕末、明治の賢人・福沢諭吉の波乱の半生。西洋文明に開眼した諭吉が激動の世で信念を貫く姿を、若き塾生との関わりと共に描く歴史大作。苦悩しつつも前進する人間・諭吉をみつめた澤井演出に酔う。

S29('54)／新東宝／白黒／スタンダード／1時間40分

■監督：中川信夫■脚本：館岡謙之助■撮影：横山実■音楽：黛敏郎■美術：鳥居塚誠一■出演：岡田英次、若山セツ子、左幸子、山形勲、細川俊夫、久保菜穗子、角梨枝子

故郷を追われ、妻子を残して北海道へ渡った歌人・石川啄木。放浪の歳月を過ごしながら、創作と現実の狭間で揺れる啄木と、彼を見守る人々を描く。中川監督の念願だった企画で、20代の啄木の漂白生活が大らかなユーモアと抒情の中で綴られる。

＊デジタル上映

S36('61)／大映京都／カラー／シネスコ／2時間37分

■監督：三隅研次■脚本：八尋不二■撮影：今井ひろし、宮川一夫■音楽：伊福部昭■美術監督：伊藤熹朔■美術：内藤昭■出演：本郷功次郎、チェリト・ソリス、勝新太郎、川口浩、市川雷蔵、山本富士子、中村玉緒、京マチ子、山田五十鈴

名家に誕生した仏陀が悟りを開き、人々に功徳をもたらし入滅するまでを壮大なスケールで描いたスペクタクル大作。日本初の70ミリ作品で、オールスターが総出演、大ヒットを記録。時代劇の名匠・三隅研次が、大胆かつ細心の演出で飽きさせない。

S23('48)／大映京都／白黒／スタンダード／1時間34分

■監督・脚本：伊藤大輔■原作：北条秀司■撮影：石本秀雄■音楽：西梧郎■美術：角井平吉■出演：坂東妻三郎、水戸光子、三條美紀、滝沢修、斎藤達雄、坂本武、小杉勇

不世出の棋士・阪田三吉の将棋にかけた半生を描く名篇。大阪・天王寺の長屋で暮らす草履職人の三吉は家業も忘れ、将棋に打ち込むが…。阪妻が、粗野だが純真な男を軽妙かつ人間味豊かに熱演。三吉を支え続ける妻の愛にはただ涙あるのみ。

S34('59)／新東宝／白黒／スタンダード／1時間19分

■監督：中川信夫■原作：尾崎士郎■脚本：杉本彰、中川信夫■撮影：西本正■音楽：小沢秀夫■美術：黒沢治安■出演：宇津井健、北沢典子、舟橋元、坂東好太郎、林幹、高松政雄、中村虎彦、沼田曜一

江戸時代の伝説の名力士・雷電爲右エ門の立志伝。浅間山麓に住む太郎吉は、奉公に出ることになった恋人・おきんを追って、相撲部屋に入門するために江戸へ――。宇津井と北沢の好演、中川監督の豊かな詩情があいまった青春恋愛物語が涙を誘う。

＊デジタル上映

S34('59)／新東宝／白黒／スタンダード／1時間21分

監督：中川信夫■原作：尾崎士郎■脚本：杉本彰、中川信夫■撮影：西本正■音楽：小沢秀夫■美術：黒沢治安■出演：宇津井健、北沢典子、沼田曜一、池内淳子、坂東好太郎、林幹、中村虎彦

江戸へ出た太郎吉は、多くの人々に助けられながら出世するも、一方おきんとの恋は…。身を落していくおきんを演じる北沢典子が切ない名演をみせる。立身出世の陰で涙をのむ孤独を静かにみつめる中川監督の、厳しくも温かい眼差しが秀逸。

＊デジタル上映

S38('63)／大映東京／白黒／シネスコ／1時間43分

■監督：三隅研次■脚本：八尋不二■撮影：小林節雄■音楽：斎藤一郎■美術：間野重雄■出演：宇津井健、内藤武敏、藤巻潤、小池朝雄、高松英郎、石井竜一、瀧花久子、坪内ミキ子、中条静夫

早稲田大学の創設者にして、維新後の近代日本の礎を築いた大隈重信の千波万波の生涯をたどる。波乱の明治期を駆け抜けた男の重厚な一代記で、政財界の大物と渡り合う大隈を宇津井が堂々と演じる。大隈生誕125年記念映画として製作された。

＊16mm上映

S37('62)／大映京都／白黒／シネスコ／1時間28分

■監督：安田公義■原作：谷屋充『桃中軒雲右衛門とその妻』■脚色：辻久一■撮影：竹村康和■音楽：小川寛興■美術：太田誠一■出演：三波春夫、月丘夢路、浦路洋子、石黒達也、山路義人、三波豊和、若杉曜子

昭和の歌謡スター・三波春夫が、明治後期に絶大な人気を博した浪曲師・桃中軒雲右衛門の半生を演じた異色作。師匠の妻と出奔し流浪の生活を強いられた雲右衛門が、見事立身出世するまでの物語を、浪曲師の顔を持つ三波が力演する。

S31('56)／宝塚映画／白黒／スタンダード／1時間48分

■監督：木村恵吾■原作：長谷川幸延■脚本：渋谷天外、木村恵吾■撮影：三村明■音楽：原六朗■美術：水谷浩■出演：森繁久彌、淡島千景、高峰三枝子、八千草薫、田村楽太、浮世亭歌楽、田中春男、横山エンタツ

大阪が生んだ伝説の落語家・桂春団治の、世にも面白い生涯を描いた浪花の人情噺。好色漢を演じさせたら天下一品の森繁が主演、本物さながらの存在感をみせる。春団治を取り巻く女たちに扮する華やかな女優陣の競演も見応えあり。

H5('93)／東映＝日本テレビ／カラー／ヴィスタ／2時間5分

■監督：澤井信一郎■原作：郷原宏■脚本：宮崎晃、伊藤亮爾、澤井信一郎■撮影：木村大作■音楽：佐藤勝■美術：井川徳道■出演：風間トオル、鷲尾いさ子、天宮良、藤谷美紀、浅野ゆう子、檀ふみ、榎木孝明、柴田恭兵、藤村志保、加藤剛

「荒城の月」「花」で有名な作曲家・滝廉太郎の短い生涯を描く。命を削り音楽に打ち込む滝の、儚くも激しい恋と友情と青春の日々。佐藤勝の雄壮な音楽、俳優陣の嘘のない演奏場面、澤井監督の繊細な演出が響き合う、堂々たる風格の傑作音楽映画。

S39('64)／東京映画／カラー／シネスコ／1時間30分

■監督：佐伯幸三■脚本：八住利雄■撮影：黒田徳三■音楽：服部良一■美術：小島基司■出演：フランキー堺、長島茂雄、淡島千景、佐原健二、王貞治、川上哲治、船戸順、伴淳三郎、沢村貞子

昭和38年、三冠王に挑戦する"ミスター・ジャイアンツ"長嶋茂雄を追ったセミフィクション映画。主演の長嶋本人の他にも、王貞治や昨年亡くなった川上哲治監督も登場する野球ファンには垂涎の一篇。映画スターが多数出演するのもお楽しみ。

S31('56)／東宝＝協同プロ／カラー／スタンダード／1時間40分

■監督：内川清一郎■原案：菊島隆三■脚本：須崎勝弥、内川清一郎■撮影：岡崎宏三■音楽：大森盛太郎■美術：北川恵笥■出演：力道山、森繁久彌、岸恵子、有島一郎、平田昭彦、江利チエミ、マイク・マズルキ、十朱久雄

昭和のスーパーレスラー・力道山が本人役で自ら主演する、虚実ないまぜの英雄列伝。子供達に熱狂的な人気を誇る力道山の周辺で八百長話がうごめく中、タイトルマッチのゴングが鳴る。迫力たっぷりの試合場面は超貴重。森繁、岸ら共演陣も豪華。

S50('75)／日活／カラー／ヴィスタ／1時間16分

■監督：田中登■脚本：いどあきお■撮影：森勝■音楽：坂田晃一■美術：川崎軍二■出演：宮下順子、江角英明、坂本長利、橘田良江、千早蘭、水木京一、花柳幻舟、五條博

昭和11年に起きた阿部定事件を題材に、女と男の愛欲の世界を極限まで描き尽くした名作。二・二六事件で騒然とする外界をよそにほぼ全編密室で展開される情事が、純粋なまでに凄絶だ。宮下順子が最後にみせる澄み切った表情は忘れられない。

H8('96)／カルチュア・パブリッシャーズ／カラー／ヴィスタ／1時間50分

■監督：市川準■脚本：市川準、鈴木秀幸、森川孝治■撮影：小林達比古■音楽：清水一登、れいち■美術：間野重雄■出演：本木雅弘、鈴木卓爾、阿部サダヲ、古田新太、さとうこうじ、大森嘉之、生瀬勝久、翁華栄、安部聡子

手塚治虫、石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄らが漫画の道を志し、共に暮らした伝説のアパート「トキワ荘」。夢を抱いた若者たちの、貧しくとも情熱に溢れた日々を、東京の街を活写してきた市川準が味わい深く綴った珠玉の青春ドラマ。