神保町シアター

S10('35)／第一映画／白黒／スタンダード／1時間20分

■監督：溝口健二■原作：川口松太郎■脚本：�燗�達之助■撮影：三木稔■音楽：高木孝一■美術：西七郎■出演：原駒子、夏川大二郎、中野英治、歌川絹枝、梅村蓉子、大泉慶治、芝田新

西南戦争の戦火を逃れるため一台の馬車に同乗した人々。その中には町の有力者とともに二人の酌婦がいた…。蔑視されながらも、彼らの犠牲になることを厭わないお雪(山田)の儚げな芯の強さに魅了される、溝口の野心作。

＊16mm上映

S13('38)／東宝／白黒／スタンダード／1時間28分

■監督・脚本：成瀬巳喜男■原作：川口松太郎■撮影：伊藤武夫■音楽：飯田信夫■装置：久保一雄■出演：長谷川一夫、藤原釜足、大川平八郎、三島雅夫、柳谷寛

第一回直木賞を受賞した川口松太郎の小説を成瀬が脚色。新内語りの人気コンビ、山田扮する三味線弾きの鶴八と太夫･鶴次郎は、互いに想い合いながらも喧嘩別れを繰り返す。芸に生きた男女の切ない人情噺。

S18('43)／東宝／白黒／スタンダード／1時間33分

■監督：成瀬巳喜男■原作：泉鏡花■脚本：久保田万太郎■撮影：中井朝一■音楽：深井史郎■美術：平川透徹■出演：花柳章太郎、柳永二郎、大矢市次郎、伊志井寛、清川玉枝

旅先で謡の名人を辱めて自殺に追いやってしまった能役者の喜多八(花柳)は、自身も一門を勘当され…。山田は自殺した男の娘に扮し、喜多八を親の仇と知らずに芸の道へと導かれていく。劇中で披露される山田の舞が見事。

S19('44)／東宝／白黒／スタンダード／1時間22分

■監督：成瀬巳喜男■原作：長谷川幸延■脚本：八住利雄■撮影：小倉金弥■音楽：清瀬保二■美術：中古智■出演：長谷川一夫、古川緑波、進藤英太郎、花井蘭子、志村喬

『鶴八鶴次郎』に続く長谷川・山田共演、成瀬監督による芸道物で、慢心した役者を一人前にするため修行に出す興行師(緑波)を中心に、明治時代の芝居の世界を描く名作。男を想って別れる女義太夫(山田)の心意気に涙する。

S31('56)／東宝／白黒／スタンダード／1時間56分

■監督：成瀬巳喜男■原作：幸田文■脚本：田中澄江、井手俊郎■撮影：玉井正夫■音楽：斎藤一郎■美術：中古智■出演：田中絹代、高峰秀子、岡田茉莉子、杉村春子、栗島すみ子

時代に押し流されて変わりゆく花柳界で葛藤する新旧の芸者たちを、柳橋の芸者置屋を舞台に描いた群像劇の名作。山田は、昔堅気で芸に厳しい置屋の主人を演じている。戦前の大女優･栗島すみ子の貫禄ある芝居も必見。

S11('36)／第一映画／白黒／スタンダード／1時間10分

■監督・原作：溝口健二■脚本：依田義賢■撮影：三木稔■装置：今井恵一、堀口庄太郎、岸中勇次郎■出演：梅村蓉子、志賀廼家弁慶、進藤英太郎、大倉文男、久野和子

古風で情に厚い姉と現代的で勝気な妹。京都･祇園の姉妹芸者の対照的な生き方を冷徹に描いた傑作。冒頭からスリップ姿で登場する、まだ十九歳の山田の、女優としての凄みに釘付けとなる。キネマ旬報第一位。

S35('60)／東宝／カラー／シネスコ／1時間51分

■監督：成瀬巳喜男、川島雄三■脚本：井手俊郎、松山善三■撮影：安本淳、飯村正■音楽：斎藤一郎■美術：松山崇、北辰雄■出演：司葉子、白川由美、草笛光子、宝田明、三橋達也

東京下町にある料亭の女将(山田)は、女手ひとつで一人娘(司)を育て上げた。奇遇にも、同じ男を愛してしまった母娘が選んだ生き方とは？ 花街に生きる芸者達の悲喜交々も織り交ぜて描かれる風俗ドラマ。

S33('58)／宝塚映画／白黒／シネスコ／2時間3分

■監督：川島雄三■原作：山崎豊子■脚本：八住利雄、川島雄三■撮影：岡崎宏三■音楽：真鍋理一郎■美術：小島基司■出演：森繁久彌、中村鴈治郎、浪花千栄子、山茶花究、乙羽信子

昆布問屋を舞台にした浪花商人の一代記で、山崎豊子の同名小説の映画化。商人夫婦を演じる森繁･山田の熱演と、中村鴈次郎や浪花千栄子、山茶花究ら芸達者な名優たちが繰り広げる軽妙なやりとりも見ものの文芸映画の秀作。

S31('56)／東京映画／白黒／スタンダード／1時間18分

■監督：木村恵吾■原作：舟橋聖一■脚本：長瀬喜伴■撮影：三村明■音楽：塚原晢夫■美術：北猛夫■出演：瑳峨三智子、上原謙、仲代達矢、千秋実、淡路恵子

男にだらしのない母親(山田)に嫌気がさした純潔娘(瑳峨)は、家を出て旅館の住み込み女中となるが…。実の親子である山田･瑳峨が母娘役で初共演。コケティッシュな魅力が光る瑳峨の個性が本作で開花した。

S11('36)／第一映画／白黒／スタンダード／1時間11分

■監督・原作：溝口健二■脚本：依田義賢■台詞：藤原忠■撮影：三木稔■出演：原健作、志賀廼家弁慶、梅村蓉子、進藤英太郎、大倉千代子

大阪の電話交換手･アキ子は、家族の苦境を救うため、社長の愛人となるが…。山田の出世作の一本で、男達に裏切られてもなお逞しく生きていく力強さに圧倒される。大阪の風俗を活写した溝口の手腕にも唸る傑作。

S15('40)／東宝／白黒／スタンダード／2時間9分

■監督・脚本：衣笠貞之助■原作：川口松太郎■撮影：三村明■鼓曲：望月太明蔵■洋楽：深井史郎■装置：島康平■出演：長谷川一夫、入江たか子、大河内伝次郎、黒川弥太郎、丸山定夫

悪どい家老の息子を斬り、旅廻り一座に逃げ込んだ千太郎(長谷川)は、女形の姿に身をやつし陰謀を暴く。豪華スター共演による波瀾万丈の時代劇大作。山田は三味線弾きお島に扮し、長谷川と息の合った演技を見せる。

S16('41)／東宝／白黒／スタンダード／1時間29分

■監督：マキノ正博■脚本：小国英雄■撮影：伊藤武夫■音楽：鈴木静一■装置：樋野正雄■出演：長谷川一夫、高峰秀子、徳川夢声、江川宇礼雄、渡辺篤

貧乏長屋の強欲な大家が殺され、住人全員に嫌疑がかけられる。犯人探しをする長谷川と山田の絶妙な掛け合いが愉快な、徹頭徹尾面白い推理時代劇。山田の軽やかな魅力を堪能できる。高峰の健気さも見どころ。

S30('55)／日活／白黒／スタンダード／1時間57分

■監督・脚本：マキノ雅弘■原作：長谷川幸延■撮影：高村倉太郎■音楽：大久保徳次郎■美術：小池一美■出演：森繁久彌、左幸子、河津清三郎、水島道太郎、沢村国太郎

新時代の殺陣の創造に苦闘する殺陣師･段平と、それを見守る妻、娘の情愛を笑いと涙で描いた名篇。妻役に扮した山田は、深い夫婦愛を情感豊かに演じている。山田と森繁の歯切れよい大阪弁のやり取りが楽しい。

＊16mm上映

S27('52)／松竹大船／白黒／スタンダード／1時間52分

■監督：渋谷実■脚本：猪俣勝人、斎藤良輔■撮影：長岡博之■音楽：奥村一■美術：浜田辰雄、平高主計■出演：池部良、山村聰、小林トシ子、多々良純、伊達信

建設局で汚職に手を染める課長(山村)と、それに巻き込まれ、汚れた世界に堕ちていく部下の青年(池部)を軸に、戦後社会の暗部を鋭く描いた名作。山田は池部を破滅へと導くバーのマダム役で、円熟の名演は貫禄充分。

＊仏語字幕入りプリントで上映

S26('51)／松竹大船／白黒／スタンダード／1時間31分

■監督：中村登■原案：田中澄江■脚本：柳井隆雄、田中澄江■撮影：厚田雄春■音楽：黛敏郎■美術：熊谷正雄■出演：笠智衆、高峰秀子、岸恵子、佐田啓二、高堂国典

松竹メロドラマの名匠･中村登の出世作といわれる家族ドラマ。山田の良妻賢母ぶり、絵描きを志す長女･高峰の可愛らしさは、絶品。貧しくとも明るく健気に生きる一家を豪華キャストが演じる贅沢な一本。

＊16mm上映

S27('52)／キヌタプロ／白黒／スタンダード／1時間40分

■監督：亀井文夫■原作：徳永直■脚本：棚田吾郎■撮影：瀬川順一■音楽：飯田信夫■美術：平川透徹■出演：神田隆、岸旗江、三島雅夫、北林谷栄、加藤嘉

幼子を抱えて、戦争ではぐれた長男を探す戦争未亡人の苦悩を描く。記録映画作家･亀井文夫が手掛けた劇映画。徹底したリアリズム描写の中、母と女であることの間で揺れる心情を山田が熱演し、凛とした存在感が際立つ。

＊16mm上映

S28('53)／北海道炭労、キヌタプロ／白黒／スタンダード／2時間17分

■監督：亀井文夫■脚本：新藤兼人、千明茂雄■撮影：仲沢半次郎■音楽：飯田信夫■美術：江口準次■出演：岸旗江、宇野重吉、織本順吉、内藤武敏、北林谷栄

山田が独立プロの社会派映画に積極的に出演していた時期の代表作。北海道の炭鉱事故で行方不明になった夫に代わり、抗夫として働いた母親の半生。戦前･戦後と時代が変転する中、逞しく生きる女の姿が胸を打つ。

＊16mm上映

S14('39)／東宝東京／白黒／スタンダード／1時間2分

■監督：中川信夫■原作：川口松太郎■脚本：貴船八郎■撮影：安本淳■音楽：伊藤昇■美術：島康平■出演：大河内伝次郎、高峰秀子、黒川弥太郎、岸井明、澤村貞子、清川莊司、進藤英太郎

おなじみ丹下左膳の出自を描いた東宝版、第三作。本作では片腕に次いで片目を失ってしまい…。親の仇を討つべく傷を負った左膳と、それをかくまう商家の娘(高峰)の交流が微笑ましい。山田は左膳を慕う女を気丈に演じる。

＊東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

S17('42)／東宝／白黒／スタンダード／1時間48分

■監督：マキノ正博■原作：泉鏡花■脚本：小国英雄■撮影：三浦光雄■音楽：鈴木静一■美術：久保一雄■出演：長谷川一夫、古川緑波、高峰秀子、山本礼三郎、進藤英太郎

新派悲劇の代表作を、長谷川一夫・山田五十鈴の黄金コンビで映画化した名作。愛する男のために身をひく女の潔さと哀しみを表現した山田の演技が見事。若き高峰秀子の可憐さも見もの。細やかなマキノ演出が心に沁みる。

S32('57)／東宝／白黒／スタンダード／59分

■監督：千葉泰樹■原作：林芙美子■脚本：笠原良三、吉田精弥■撮影：西垣六郎■音楽：伊福部昭■美術：中古智■出演：三船敏郎、淡路恵子、村田知栄子、田中春男、多々良純

下町で夫の復員を待ちながら、行商で生計を立て子供を育てる女が、シベリア帰りのトラック運転手と心を通わすが…。戦後の混乱を生き抜いた庶民の悲哀を描いた傑作。社会派女優の顔を持つ山田の代表作の一本。

S31('56)／東京映画／白黒／スタンダード／2時間16分

■監督：豊田四郎■原作：谷崎潤一郎■脚本：八住利雄■撮影：三浦光雄■音楽：芥川也寸志■美術：伊藤熹朔■出演：森繁久彌、香川京子、浪花千栄子、山茶花究、万代峯子

荒物屋を営む庄造(森繁)は、古風で気丈な前妻(山田)と若く奔放な後妻(香川)の板挟みに耐えきれず、現実逃避のために愛猫リリーに耽溺してゆく…。愛と欲の絡み合う上質な茶番劇で、強かな姑に扮する浪花も可笑しい。

S10('35)／第一映画／白黒／スタンダード／1時間30分

■監督：溝口健二■原作：泉鏡花『売色鴨南蛮』■脚本：�燗�達之助■撮影：三木稔■美術：小栗美二■出演：夏川大二郎、芳沢一郎（羅門光三郎）、芝田新、島井正、藤井源市

偶然助けた男に無償の愛を注ぐ女の運命――。17歳の山田五十鈴がその凄絶な妖艶さで女の哀しみを演じ切る。この作品以降、山田・溝口コンビは『マリヤのお雪』『浪華悲歌』『祇園の姉妹』と、傑作を連発していく。

＊東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

S7('32)／千恵プロ＝日活／白黒／スタンダード／約20分

■監督：伊丹万作■原作・脚本：伊勢野重任■撮影：石本秀雄■出演：片岡千恵蔵、高勢実乗、瀬川路三郎、渥美秀一郎、伴淳三郎

名高い剣豪のニセ者に仕立て上げられた男が、ある娘を助けたことから本物と対決することに…。ナンセンスなユーモア感覚が溢れる風刺時代劇の傑作。デビュー間もない山田が初々しい存在感を発揮する。

＊東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

S9('34)／日活京都／白黒／スタンダード／43分

■監督：千葉泰樹■原作・脚本：小國英雄■撮影：三浦光雄■出演：杉狂児、村田知栄子、山本嘉一、稲田春子、関時男、中村寿郎

杉狂児演じるバカな跡取り息子は、一目ぼれした娘の気をひくために猛然とハッスルし始める。デビュー間もない山田の現存する最初期の現代劇の一本で、うら若き山田の愛らしさに注目の軽妙なコメディ。

＊東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品