神保町シアター

S22('47)／東横映画／白黒／スタンダード／1時間12分

■監督：松田定次■原作：横溝正史『本陣殺人事件』■脚本：比佐芳武■撮影：石本秀雄■音楽：大久保徳次郎■美術：岩野音吉■出演：片岡千恵蔵、原節子、八汐路惠子、初音麗子、風見章子、杉村春子、宮口精二

戦後ミステリの幕を開いた『本陣殺人事件』の映画化。金田一耕助が民主主義の使者として密室の謎を解く。原作を読んでいれば驚倒必至。原節子の眼鏡っ娘ぶりも必見！

＊東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

S24('49)／東横映画京都／白黒／スタンダード／1時間42分

■監督：松田定次■原作：横溝正史■脚本：比佐芳武■撮影：伊藤武夫■音楽：深井史郎■美術：嵯峨一平■出演：片岡千恵蔵、喜多川千鶴、三宅邦子、小杉勇、大友柳太郎、斎藤達雄、進藤英太郎

千恵蔵金田一、今度は瀬戸内海の島へ。陰鬱な雰囲気のもとで起きる三人娘の連続殺人。眼鏡っ娘助手は喜多川千鶴。ラストでいきなり哄笑し、駆け回る名探偵に驚くな！

＊東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

S54('79)／東映東京／カラー／シネスコ／2時間16分

■監督：斎藤光正■原作：横溝正史■脚本：野上龍雄■撮影：伊佐山巌■音楽：山本邦山、今井裕／■美術：横尾嘉良■出演：西田敏行、夏八木勲、鰐淵晴子、斉藤とも子、仲谷昇、梅宮辰夫、中村玉緒

原作者による「この作品だけは映画化したくなかった」というCMが公開当時流行ったが実は54年に片岡千恵蔵で映画化済み。西田金田一の推理ぶりや如何に。

S31('56)／東映東京／白黒／スタンダード／1時間28分

■監督：小林恒夫、小沢茂弘■原作：横溝正史■脚本：比佐芳武■撮影：西川庄衛、星島一郎■音楽：仁木他喜雄■美術：森幹男■出演：片岡千恵蔵、高千穂ひづる、三条雅也、中原ひとみ、小沢栄、三浦光子

ちょっと太ってきた千恵蔵による金田一物最終作。眼鏡っ娘助手は高千穂ひづる。莫大な遺産をめぐる連続殺人に巻きこまれた美少女・音禰に扮する中原ひとみに萌えろ！

S36('61)／東映東京／白黒／シネスコ／1時間24分

■監督：渡辺邦男■原作：横溝正史■脚本：渡辺邦男、結束信二■撮影：渡辺孝■音楽：山田栄一■美術：進藤誠吾■出演：高倉健、北原しげみ、小野透、永田靖、大村文武、志村妙子、石黒達也、中村是好

金田一耕助役に高倉健を迎え、脚本の結束信二は原作を読まなかったという異色篇。健さんの名探偵は寡黙でも不器用でもないが、本作でも眼鏡っ娘の探偵助手は健在だ！

S31('56)／東宝／白黒／スタンダード／1時間29分

■監督：中川信夫■原作：横溝正史■脚本：小国英雄、西島大■撮影：安本淳■音楽：佐藤勝■美術：北猛夫、安部輝明■出演：池部良、久慈あさみ、塩沢登代路、安西郷子、有島一郎、東野英治郎、千秋実

コートに身を包んだ池部良がハリウッド風な金田一を演じ、怪談映画の巨匠・中川信夫がムードを盛り上げる。バラバラ死体のラインダンスと、意外（？）な犯人に驚愕。

S50('75)／たかばやしよういちプロ、映像京都、ATG／カラー／シネスコ／1時間46分

■監督・脚本：高林陽一■原作：横溝正史■撮影：森田富士郎■音楽：大林宣彦■美術：西岡善信■出演：中尾彬、田村高広、村松英子、東野孝彦、常田富士男、水原ゆう紀、加賀邦男

70年代の横溝ブームは、実はこのATG映画から始まった。ジーンズ姿のヒッピー金田一はまさに同時代に甦った名探偵。田村高広・高沢順子の異様な兄妹像が印象的。

S31('56)／日活／白黒／スタンダード／1時間41分

■監督：井上梅次■原作：江戸川乱歩『十字路』■脚本：渡辺剣次■撮影：伊藤武夫■音楽：佐藤勝■美術：中村公彦■出演：三国連太郎、新珠三千代、芦川いづみ、大坂志郎、安部徹、山岡久乃、沢村国太郎

巨匠乱歩と渡辺剣次の合作によるサスペンスで、ヒッチコックなどの影響を受け、この分野に挑戦した意欲作。偶然が綾なすドラマを曲者出演陣が名演もしくは怪演する。

＊16mmで上映

S33('58)／新映画社／白黒／スタンダード／1時間37分

■監督：山本弘之■原作：江戸川乱歩■脚本：陶山鉄■撮影：古泉勝男■音楽：紙恭輔■美術：狩野健■出演：藤田進、宮城千賀子、岡譲司、河上敬子、舟橋元、八島恵子

原作は江戸川乱歩が大衆向けに転じた第一作。明智探偵は藤田進だが、自らもミステリマニアだった岡譲司の怪演が全て。ラストのパノラマ地獄まで驚き、そして呆れよ！

＊16mmで上映

S47('72)／松竹大船／カラー／シネスコ／1時間30分

■監督：貞永方久■原作：シャーロット・アームストロング■脚本：白坂依志夫、大野靖子、桂千穂■撮影：加藤正幸■音楽：池野成■美術：重田重盛■出演：岩下志麻、香山美子、井上孝雄、鈴木光枝、石井トミコ、松橋登

M・モンローの初主演作『ノックは無用』の原作者S・アームストロングの作品の翻案。どちらも悪女ものだが岩下志麻とモンローの悪女競演、勝負はいずれに？

S37('62)／大映東京／白黒／シネスコ／1時間33分

■監督：田中徳三■原作：高木彬光■脚本：高岩肇■撮影：小林節雄■音楽：塚原哲夫■美術：仲美喜雄■出演：宇津井健、万里昌代、川崎敬三、小沢栄太郎、高松英郎、根上淳、中田康子、倉田マユミ

誘拐ミステリに法廷物を絡めて新生面を拓いた高木彬光作品が原作。『天国と地獄』の前年に作られていた隠れた傑作。宇津井健扮する百谷弁護士とともに意想外の展開を追え！

＊16mmで上映

S40('65)／東京映画／白黒／シネスコ／1時間36分

■監督：堀川弘通■原作：W・P・マッギヴァーン■脚本：松山善三、池田一朗■撮影：黒田徳三■音楽：武満徹■美術：小野友滋■出演：仲代達矢、淡島千景、須賀不二男、吉村実子、松村達雄、伴淳三郎、東野英治郎

仲代達矢と須賀不二夫を比べればどうしても仲代の方がエリートぽいが、本作では須賀がエリートのいとこ役で、仲代に妻を寝取られる。異色のキャスティング？

S36('61)／新東宝／白黒／シネスコ／1時間25分

■監督：石川義寛■原作：島田一男■脚本：石川義寛、宮川一郎■撮影：中溝勇雄■音楽：渡辺宙明■美術：黒沢治安■出演：天知茂、三原葉子、水原ユカ、坂本武、宮浩一、細川俊夫、林寛

怜悧冷酷な役柄が十八番の天知茂ががらりイメージの違う明朗な弁護士探偵を演じた、これまた異色のキャスティング。弁護士には見えないが、そこはまあご愛嬌。

＊16mmで上映

S33('58)／大映東京／白黒／シネスコ／1時間25分

■監督：島耕二■原作：仁木悦子■脚本：高岩肇■撮影：小原譲治■音楽：大森盛太郎■美術：仲美喜雄■出演：仁木多鶴子、石井竜一、北原義郎、品川隆二、高松英郎、浦辺粂子、金田一敦子

仁木悦子の江戸川乱歩賞受賞作の映画化。仁木多鶴子扮する女子大生探偵が原作以上の活躍を見せ、"日本のクリスティ"の名にふさわしいきめ細やかな謎解きを披露する。

＊16mmで上映

S30('55)／新東宝／白黒／スタンダード／1時間31分

■監督：内川清一郎■原案：植草甚一■脚本：川内康範■撮影：河崎喜久三■音楽：大森盛太郎■美術：黒沢治安■出演：上原謙、中山昭二、筑紫あけみ、角梨枝子、細川俊夫、永井智雄、丹波哲郎

短波無線機を駆使し衆人環視下で行われる身代金取引。『天国と地獄』のあのトリックが8年も早く使われていた？　被害者を操る謎の声はドクロベエこと滝口順平！

＊デジタル上映【『悪魔の囁き』デジタル上映素材についてのおことわり】本編途中にカウント画面が入る箇所がある等、お見苦しい部分がございますことを予めご了承ください

S35('60)／松竹大船／白黒／シネスコ／1時間32分

■監督：堀内真直■原作：有馬頼義■脚本：高岩肇■撮影：小原治夫■音楽：木下忠司■美術：梅田千代夫■出演：佐田啓二、岡田茉莉子、伊藤雄之助、杉浦直樹、安井昌二、浅茅しのぶ、三井弘次

野球というミステリにしにくい題材に挑んだ映画にしにくい原作を、正面から堂々と映画化した異色作。三井弘次の文字通りの怪演も見どころのひとつ。

S38('63)／大映東京／カラー／シネスコ／1時間35分

■監督・脚本：井上梅次■原作：ハロルド・Q・マスル■撮影：渡辺徹■音楽：伊部晴美■美術：井上章■出演：田宮二郎、若尾文子、江波杏子、川崎敬三、村上不二夫、安部徹

探偵役は田宮二郎扮する弁護士・中部だが、彼自身が事件に巻き込まれ、ストーリィは二転三転。観客にも一切情報が与えられないところがサスペンスフルで目が離せない！

S39('64)／日活／白黒／シネスコ／2時間3分

■監督：中平康■原作：戸川昌子■脚本：浅野辰雄■撮影：山崎善弘■音楽：黛敏郎■美術：大鶴泰弘■出演：仲谷昇、戸川昌子、北村和夫、十朱幸代、小園蓉子、稲野和子、中尾彬、宮口精二

シャンソン歌手にして作家という顔を持つ作者が、何と自らのベストセラーの映画化に準主役で登場。漁色家の手記にまつわる連続殺人をスタイリッシュに描くは中平康。

S37('62)／大映東京／白黒／シネスコ／1時間29分

■監督：富本壮吉■原作：黒岩重吾■脚本：高岩肇■撮影：宗川信夫■音楽：池野成■美術：千田隆■出演：田宮二郎、叶順子、高松英郎、角梨枝子、弓恵子、小沢栄太郎、村上不二夫

出世欲にかられた男、という田宮二郎十八番の役であるが、本作では利用していた女の殺人事件に巻き込まれる。あたふたする田宮二郎というのは珍しい見物。

S32('57)／東京映画／白黒／スタンダード／1時間38分

■監督：杉江敏男■原作：久生十蘭■脚本：長谷川公之■撮影：完倉泰一■音楽：神津善行■美術：北辰雄■出演：乙羽信子、石浜朗、淡路恵子、千田是也、千秋実、仲代達矢、多々良純

モダン派・久生十蘭の遺作を乙羽信子主演で映画化。地味な原作をそれに忠実に地味に映画化したことで、逆にミステリー性が際立った佳作となっている。

S41('66)／テアトル・プロダクション／白黒／シネスコ／1時間30分

■監督：長谷和夫■原作：笹沢左保『空白の起点』■脚本：宮川一郎■撮影：小杉正雄■音楽：牧野昭一■美術：根岸正晃■出演：天知茂、川口小枝、中谷一郎、加藤嘉、菅井一郎、原知佐子、岩崎加根子

笹沢佐保原作が描いた女の悲しさを川口小枝が見事に体現。天知茂もすっかり食われてしまった感。なお、天知の同僚役の原知佐子は実相寺昭雄夫人でもある。

S33('58)／東映東京／カラー／シネスコ／1時間33分

■監督：松田定次■脚本：比佐芳武■撮影：川崎新太郎■音楽：深井史郎■美術：進藤誠吾■出演：片岡千恵蔵、高峰三枝子、進藤英太郎、高倉健、三浦光子、志村喬、三島雅夫

千恵蔵の多羅尾伴内シリーズ初のカラー作品。楽しげに探偵ごっこをくり広げる豪華俳優陣や、松田監督ならではのチャンバラのように華麗な銃撃戦は映画の楽しさ満載！

S35('60)／松竹大船／白黒／シネスコ／1時間36分

■監督：高橋治■監督：ウィリアム・アイリッシュ■脚本：田村孟、高橋治■撮影：川又�ｴ■音楽：前田憲男■美術：宇野耕司■出演：小山明子、渡辺文雄、東山千栄子、斎藤達雄、瞳麗子、高野真二

松竹ヌーベルバーグ調で撮ったミステリ映画。アンニュイなムードが全編を覆い。小山明子のもつ乾いた魅力が印象に残る。脚本の田村孟がつけた台詞回しも独特。

S33('58)／東宝／白黒／シネスコ／1時間34分

■監督：丸林久信■原作：樫原一郎『汚れた刑事』■脚本：橋本忍■撮影：遠藤精一■音楽：宅孝二■美術：阿久根厳■出演：佐藤允、淡路恵子、天本英世、土屋嘉男、横山道代、山茶花究、中丸忠雄

麻薬Gメン映画。主役の佐藤充も適役かつ熱演だが、輪をかけて天本英世のヤク中演技が凄い。他にガス人間と電送人間の刑事コンビとか歌う加藤春哉とか、見所満載！！

S23('48)／大映京都／白黒／スタンダード／1時間24分

■監督：松田定次■脚本：比佐芳武■撮影：石本秀雄■音楽：白木義信■美術：角井平吉■出演：片岡千恵蔵、喜多川千鶴、高田稔、日高澄子、大友柳太郎、沢村貞子

"七つの顔の男"シリーズ第三弾。焼け跡だらけの街やバラック村を背景に、戦前からの特権階級がたくらむ犯罪とは。特撮も何もなしの千恵蔵の"変身"シーンにも注目。

＊16mmで上映

S57('82)／円谷プロ／カラー／スタンダード／1時間35分

■監督：佐藤肇■原作：泡坂妻夫『乱れからくり』■脚本：大和屋竺■撮影：横手丘二■音楽：木森敏之■出演：柴田恭兵、古城都、新藤恵美、中尾彬、岸田森、草野大悟

探偵小説の楽しさを存分に味わわせてくれる伝説のテレフィーチャー。松田優作主演の東宝映画版では、予算の関係で削られた巨大迷路が登場するのはさすが円谷プロ！

＊16mmで上映

S39('64)／東宝／白黒／シネスコ／1時間28分

■監督：岩内克己■原作：エド・マクベイン『殺意の楔』■脚本：山田信夫■撮影：飯村正■音楽：別宮貞夫■美術：育野重一■出演：山崎努、加山雄三、星由里子、志村喬、田村奈己、黒部進、土屋嘉男

エド・マクベイン原作『天国と地獄』で犯人役だった山崎努が、同じマクベイン原作のこの作品でも犯人役。主役の加山雄三が全然活躍しないのに何故か面白い！

S30('55)／東宝／白黒／スタンダード／1時間29分

■監督：日高繁明■原作：渡辺啓助『浴室殺人事件』■脚本：日高繁明■撮影：三浦光雄■音楽：三木鶏郎■美術：小川一男■出演：小泉博、越路吹雪、久保賢、進藤英太郎、久慈あさみ、志村喬、徳大寺伸

不倫と嫉妬の濃ゆい四角関係（キャストに注目）に、今ではどこにもなさそうな浴槽と写真マニアの子供を配した佳篇。この時代ならではの小品ミステリの風味が楽しい。