これまでの特集企画

祝 卒寿  鈴木清順90歳
日活撮影所「鈴木組」のゴヒイキ20本

上映期間

2013年9月27日(土)〜10月25日(金)

鈴木組

未亡人のおばさんの離れに下宿している「悪太郎」。悪ガキどもを集めて猥談に余念がない。居間で縫物をしているおばさん。座っている足袋のアップ。このシーンはシナリオにはない。「少し足を動かしてください」と監督。女優さんは何を撮られているのか知らない。同じシーンのラストカット。離れの部屋の廊下に菓子が置いてある。気配を感じて悪太郎が障子を開け、うまそうな菓子に思わず唾をのむ。監督「この菓子あまり美味そうじゃないな」。小道具係り「?」。そして買ってきたのは虎屋の天皇家ご用達の菓子。「監督、日本中探したってこれ以上の菓子はないですからね」。監督「うん、これこれ」と嬉しそう。鈴木組の現場は常にサプライズの連続。鈴木さんはとにかく人を驚かすのが好きな人だ。
―――岡田裕(映画プロデューサー)

鈴木清順(すずき・せいじゅん)略歴
1923年5月24日、東京日本橋の呉服商の長男として生まれる。本名、清太郎。43年、旧制弘前高校に入学するも、学徒出陣により応召。復員後、48年に同校を卒業。
東京大学の受験に失敗したため、発足したばかりの鎌倉アカデミア映画科に入り、9月、松竹大船撮影所の助監督試験を受けて合格。同期に松山善三、井上和男、斎藤武市、中平康などがいる。助監督として渋谷実、佐々木康、中村登らに就き、51年からは岩間鶴男の専属助監督に。
54年、製作再開した日活に移籍し、滝沢英輔、山村聰、佐伯清に就いたのち、野口博志に師事。56年『港の乾杯 勝利をわが手に』で監督デビュー。58年「清順」に改名。プログラム・ピクチュアの担い手として順調なキャリアを積んでいたが、67年に発表した40本目の作品『殺しの烙印』が、あまりの斬新な映像表現ゆえに日活の上層部の逆鱗に触れ、翌年4月、会社側から一方的に専属契約を切られる。
以後フリーとなり、『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』『夢二』等を発表。後年は俳優としても活躍の場を広げている。

上映作品リスト

1.

港の乾杯  勝利をわが手に』 昭和31年 白黒 監督:鈴木清太郎 出演:三島耕、南寿美子、天路圭子、牧真介、菅井一郎

2.

暗黒街の美女』 昭和33年 白黒 監督:鈴木清順 出演:水島道太郎、白木マリ、二谷英明、芦田伸介、近藤宏

3.

素ッ裸の年令』 昭和34年 白黒 監督:鈴木清順 出演:赤木圭一郎、堀恭子、左卜全、広岡三栄子、初井言栄  *16mm上映

4.

関東無宿』 昭和38年 カラー 監督:鈴木清順 出演:小林旭、松原智恵子、中原早苗、平田大三郎、伊藤弘子

5.

殺しの烙印』 昭和42年 白黒 監督:鈴木清順 出演:宍戸錠、南原宏治、玉川伊佐男、真理アンヌ、小川万里子

6.

暗黒の旅券』 昭和34年 白黒 監督:鈴木清順 出演:葉山良二、筑波久子、岡田眞澄、白木マリ、芦田伸介

7.

すべてが狂ってる』  昭和35年 白黒 監督:鈴木清順 出演:川地民夫、禰津良子、中川姿子、芦田伸介、奈良岡朋子

8.

探偵事務所23  くたばれ悪党ども』 昭和38年 カラー 監督:鈴木清順 出演:宍戸錠、笹森礼子、川地民夫、金子信雄、佐野浅夫

9.

悪太郎』 昭和38年 白黒 監督:鈴木清順 出演:山内賢、和泉雅子、田代みどり、小園蓉子、久里千春

10.

けんかえれじい』 昭和41年 白黒 監督:鈴木清順 出演:高橋英樹、浅野順子、川津祐介、宮城千賀子、加藤武

11.

浮草の宿』 昭和31年 白黒 監督:鈴木清太郎 出演:春日八郎、木室郁子、二谷英明、山岡久乃、安部徹  *デジタル上映

12.

8時間の恐怖』 昭和32年 白黒 監督:鈴木清太郎 出演:金子信雄、利根はる恵、南寿美子、植村謙二郎、香月美奈子  *デジタル上映

13.

峠を渡る若い風』 昭和36年 カラー 監督:鈴木清順 出演:和田浩治、清水まゆみ、金子信雄、二本柳寛、藤田山、杉狂児  *デジタル上映

14.

俺たちの血が許さない』 昭和39年 カラー 監督:鈴木清順 出演:小林旭、高橋英樹、松原智恵子、長谷百合、井上昭文

15.

春婦傳』 昭和40年 白黒 監督:鈴木清順 出演:川地民夫、野川由美子、玉川伊佐男、小沢昭一、杉山俊夫

16.

悪魔の街』 昭和31年 白黒 監督:鈴木清太郎 出演:河津清三郎、菅井一郎、由美あづさ、河野秋武、中川晴彦  *デジタル上映

17.

けものの眠り』 昭和35年 白黒 監督:鈴木清順 出演:長門裕之、吉行和子、芦田伸介、西村晃、小沢昭一  *デジタル上映

18.

野獣の青春』 昭和38年 カラー 監督:鈴木清順 出演:宍戸錠、渡辺美佐子、川地民夫、香月美奈子、平田大三郎

19.

肉体の門』 昭和39年 カラー 監督:鈴木清順 出演:野川由美子、宍戸錠、和田浩治、松尾嘉代、石井富子

20.

東京流れ者』 昭和41年 カラー 監督:鈴木清順 出演:渡哲也、松原智恵子、川地民夫、二谷英明、郷B治

お知らせ

  • トークショー開催!

    このイベントは終了しました

    9/28(土)17:45〜『関東無宿』上映終了後
    ゲスト:葛生雅美さん[本作助監督]、岡田裕さん

  • 若い男女が橋を渡って来る。女は突然、幅五十糎程の鉄骨の欄干に登り何事もなく歩く。上下の男女の会話は続く。鈴木清太郎監督(後年清順と改名)『浮草の宿』のワンシーンである。今時何ともない風情だが、当時はビックリ。男が欄干の上というのが常識の世の中であったからだ。変っている監督だ。カチンコ係の新入り助監督は、これ以後『殺しの烙印』まで、鈴木監督にへばりつく事となった。 この話を友人の元小学校教員の母親が聞いていて、「鈴木清太郎」という頭は良いが、一寸変った子供を教えたことがあると懐かしんだ。 「映画を今後撮ることを止めます」、去年一月、ある対談の席上で、監督は気負なくおだやかに宣云された。どうにも残念でならない。従来の日本映画とは異った形で娯楽映画の傑作を撮り続けた監督が、今後は映画というジャンルを通り越したその先にある世界を見詰めていることは、疑う余地のない処である。
    ―――葛生雅美 くずう・まさみ(映画監督)

    岡田裕(おかだ ゆたか)…1962年日活入社。石原裕次郎、吉永小百合全盛時代に助監督を務める。鈴木清順・大和屋竺らで結成した脚本家グループ"具流八郎"に参加。1971年プロデューサーに転向後、1981年日活より独立。現在、アルゴ・ピクチャーズ代表。

  • トークショー開催!

    このイベントは終了しました

    10/5(土)17:45〜『すべてが狂ってる』上映終了後
    ゲスト:禰津良子さん[主演女優]

  • トークショー開催!

    このイベントは終了しました

    10/19(土)17:45〜『東京流れ者』上映終了後
    ゲスト:松原智恵子さん[主演女優]

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