2015年8月1日(土)〜28日(金)
企画協力:東京国立近代美術館フィルムセンター
戦後70年特別企画 1945-1946年の映画
昨年の秋、特集企画「映画は歌うよどこまでも」の中で『グランドショウ1946年』を上映した時のことです。映画を鑑賞されたお客様からこんなお話をお聞きしました。
「私は終戦のころ女学生で、学徒動員で学校にも行けず、工場で働いていたのよ。戦争が終わっても、しばらくまともな生活なんて出来なかったのに、こんな映画が作られていたなんて信じられない。あんな豪華な衣裳、どこにそんな生地があったのかしらねえ。」
『グランドショウ1946年』は、終戦後に企画・製作された1946年のお正月映画なのですが、にもかかわらず、映画の中では確かに、高峰三枝子や水ノ江瀧子が煌びやかな衣裳で歌い踊っており、先のお客様の疑問も、もっともなこととうなずけます。
果たして映画業界は、どのように終戦を迎え、復興の道を歩み出したのでしょうか。
調べてみると、戦争で焼失した映画館は全国で500館を数え、一方、空襲を免れ残った映画館は、終戦の日から一週間だけ休館し、営業を再開したといいます。その後、焼け跡にはバラックの映画館まで出現し、マッカーサーが日本に降り立ったまさに1945年8月30日同日、終戦後初の封切作品『伊豆の娘たち』『花婿太閤記』の二本が公開されたのです。
終戦直後、映画会社や映画館の人々の情熱によって届けられた映画は、戦災の中で生き抜こうとする人々の希望の光になったと、信じてやみません。今回は、日本が復興に向けて歩み出した1945年8月15日から翌年末までにGHQの厳しい検閲を通過し公開された、知られざる映画たちを回顧します。
戦後70年にあたる今夏は、これまで鑑賞したことのある作品も、また違ってみえるかもしれません。
1945年8月15日から1946年末までの間に封切られた映画の中から、
フィルムが現存する貴重な作品を上映します。
『そよかぜ』 昭和20年 白黒 監督:佐々木康 出演:並木路子、上原謙、佐野周二、齋藤達雄、若水絹子
『はたちの青春』 昭和21年 白黒 監督:佐々木康 出演:河村黎吉、幾野道子、大坂志郎、高橋豊子、坂本武
『わが恋せし乙女』 昭和21年 白黒 監督:木下惠介 出演:原保美、井川邦子、増田順二、東山千栄子、勝見庸太郎 *16mm上映
『大曾根家の朝』 昭和21年 白黒 監督:木下惠介 出演:杉村春子、三浦光子、小沢栄太郎、賀原夏子、長尾敏之助 *16mm上映
『国定忠治』 昭和21年 白黒 監督:松田定次 出演:阪東妻三郎、羅門光三郎、尾上菊太郎、飯塚敏子、香川良介
『狐の呉れた赤ん坊』 昭和20年 白黒 監督:丸根賛太郎 出演:阪東妻三郎、阿部九州男、橘公子、羅門光三郎、寺島貢、谷譲二
『或る夜の殿様』 昭和21年 白黒 監督:衣笠貞之助 出演:長谷川一夫、山田五十鈴、高峰秀子、飯田蝶子、吉川満子、志村喬、大河内傳次郎
『歌麿をめぐる五人の女』 昭和21年 白黒 監督:溝口健二 出演:坂東簑助、坂東好太郎、熄シ錦之助、田中絹代、川崎弘子
終戦間もない時期に公開された巨匠たちの作品の中から、
戦争の傷跡を色濃く映し出した作品を上映します。
『長屋紳士録』 昭和22年 白黒 監督:小津安二郎 出演:飯田蝶子、青木放屁、河村黎吉、吉川満子、坂本武、笠智衆、殿山泰司
『風の中の牝鶏』 昭和23年 白黒 監督:小津安二郎 出演:田中絹代、佐野周二、村田知英子、笠智衆、坂本武
『夜の女たち』 昭和23年 白黒 監督:溝口健二 出演:田中絹代、高杉早苗、角田富江、浦辺粂子、毛利菊江
『蜂の巣の子供たち』 昭和23年 白黒 監督:清水宏 出演:島村俊作、夏木雅子、久保田晋一郎、岩本豊、三原弘之