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延長に延長を重ねてきた十周年の掉尾を飾る、と自分で言うのも照れ臭いことですが、ようやく『夜行』をお届けできることを嬉しく思っております。

執筆は文字通り先の見えない夜行であり、 本当に夜明けを迎えられるのかと幾度も不安に思いました。 その「終わりのない夜」をさまよう感覚もまた、私が読者の皆様と分かち合いたいと願うものであります。 大作というほど長い作品ではありませんが、 実際に語られている内容は氷山の一角であり、物語の多くの部分は闇の中に隠されています。 本当は何が起こったのか――読者それぞれに想像を膨らまして頂ければ幸いです。

森見登美彦(もりみ・とみひこ)

1979年生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院修士課程修了。2003年「太陽の塔」で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2007年『夜は短し歩けよ乙女』第20回山本周五郎賞を受賞。2010年『ペンギン・ハイウェイ』で第31回日本SF大賞を受賞。『四畳半神話大系』『有頂天家族』はTVアニメ化された。他の著書に『四畳半王国見聞録』『聖なる怠け者の冒険』などがある。

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