神保町シアター

これまでの特集企画

目力対決・田宮二郎と天知茂

1. 黒の駐車場

画期的な新薬を開発した新興会社をめぐる、製薬業界の暗闘を描くスリラーサスペンス。青年社長田宮とはみ出し者の社員たちが、大手企業と闘うさまが痛快に描かれる。小気味よく練り上げられたプロットがみごとだ。

2. 黒の爆走

白バイ警官が追った暴走バイクが、子供をはねて逃走。自責の念に駆られた警官は、ライダーの溜り場に潜入し、容疑者の目星をつけるが…。単独行動をとる警官の職を賭した捜査をリアルに描く、白熱のバイクアクション。

3. 黒の凶器

家電メーカーの工員が産業スパイにだまされ、失職する。復讐に燃え、自ら産業スパイとなった男の手段を選ばない闘いを描く。映像派井上昭が、前年公開の『天国と地獄』の構図をさりげなく引用する遊びもおもしろい。

4. 黒の超特急

大映の俊英監督たちの競作となった「黒シリーズ」だが、真打ちはやはり増村保造。山陽新幹線予定地の土地開発を巡り、だまされた若き不動産業者の復讐劇。一匹狼の悪党の行動を権謀術数うずまく政財界の中で描く。

5. 大悪党

やくざに犯され、卑劣な脅迫まで受けた娘を救う弁護士の活躍。「人を殺したって、僕が弁護をすれば無罪にしてみせる」とうそぶく悪徳弁護士は、本当にやくざを殺す計画を娘に授けるが…。田宮の悪の魅力が全開。

6. スパイ

韓国から密入国した左翼大学生が収容所から脱走し、姿を消す。事件の背後に謀略を感じた新聞記者は、社命を無視して取材を進める。旧日本軍の諜報機関から、戦後スパイとなった男の運命が描かれる政治サスペンス。

7. 白い巨塔

名門大学医学部の次期教授選定をめぐる、どろどろの葛藤を描く田宮の代表作。山崎豊子原作映画の最高峰といえる本作は、重厚な俳優陣に圧倒される。その中で主役の天才外科医を演じた田宮は、まだ30歳だった。

8. 悪名

勝新太郎と田宮二郎の名コンビで、一世を風靡した悪名シリーズの第一作。河内の暴れん坊朝吉が、大阪で出会ったモートルの貞と一家を構える。重厚な勝と軽快な田宮の持ち味が縦横に発揮され、ともにスターダムにのった。

9. 続悪名

前作のヒットを受けて、製作された完結篇(しかしシリーズはその後も続く)。戦争の影さす時代を背景に、やくざに嫌気が差した朝吉が、子供のできた貞に足を洗わせようとする。ラストは映画史上の名シーンとして名高い。

10. 脂のしたたり

謎のグループが、企業乗っ取りを謀っていることを察知した証券会社の調査部員が、かつて恋人を奪われた情報屋と手を組んで一獲千金をもくろむ。敵のグループ強過ぎの感ありで、株屋の田宮は絶体絶命の窮地に追い込まれる。

11. わたしを深く埋めて

休暇を切り上げて東京に戻った弁護士の部屋で、次々と起こる怪事件。やがて事件は多額の遺産相続に関わる争いに発展していくが…。とぼけた味わいの巻き込まれ型ミステリーで、事件の連鎖に翻弄される田宮が楽しい。

12. 「女の小箱」より 夫が見た

欲と打算から始まった美貌の人妻と青年実業家の関係が、やがて愛に昇華されていく。増村と若尾の傑作群の中でもひときわ激しい愛の物語。野心に燃える実業家が、純粋な愛を得て身を滅ぼすさまを田宮が力演する。

13. 勝負は夜つけろ

神戸港の荷揚げ会社の青年社長が、高利貸しから多額の現金を調達したことから始まるフィルムノワール。「大映のゴダール」井上昭の日本映画離れしたスタイリッシュな映像の連打に魅了される。知られざる秀作。必見!

14. 不信のとき

迷惑をかけないと言われるままに愛人に子供を産ませた男。彼の妻もまたまもなく妊娠する。若尾と岡田の対決が迫力。ふたりの女に翻弄される男を演じた田宮はポスターの序列で会社ともめ、本作を最後に大映を去った。

15. 東海道四谷怪談

エログロ路線をひた走った後期新東宝に突如出現した、映画史上の名作。原作に忠実な脚色と、怪奇シーンをシュールにつなぐ大胆な表現で、わずか76分を堂々たる映像世界に構築。虚無感ただよう天知も一躍注目された。

16. 地獄

新東宝のエログロ時代を代表するキッチュな地獄巡り映画。前半は天知茂がいかにして地獄に堕ちたのかを描く。嵐寛寿郎演じる閻魔大王が待ち受ける地獄では、血の池、針山などおなじみの諸相が展開。感動の大団円もある。

17. 黄線地帯イエローライン

依頼人にだまされた殺し屋が、復讐のため行きずりの女を人質に、東京から神戸に向かう。女の異変を感じた恋人の新聞記者も後を追う。ニヒルな殺し屋は天知の独擅場。後半の舞台、起伏に富んだカスバの造形がうれしい。

18. 座頭市物語

新東宝倒産後、大映入りした天知はいきなりこの名作に出会う。記念すべき座頭市シリーズ第一作。やくざの助っ人として、心ならずも座頭市に剣を向ける平手造酒を名演。勝新太郎の躍進を支え、自身の代表作ともした。

19. 宿無し犬

田宮演じる拳銃の名手、鴨井大介のC調悪党キャラが炸裂する、犬シリーズ第一作。『悪名』同様、当初はシリーズと構想されていなかったが、本作の成功により急遽延命した。天知演じるよれよれコートの謎の男も実にいい味。

20. ごろつき犬

シリーズ3作目で、天知が2度目の登場を果たす。以後「しょぼくれ刑事」と命名されて、田宮との名コンビが呼び物となった。白浜温泉で美女に誘惑された鴨井大介は、大浴場で肩にガンホルダーの痣を持つ男と出会う。

21. 893愚連隊

中島貞夫が監督協会新人賞を得た、ニューウェーブやくざもの。任侠道とは無縁の若いチンピラたちの群像劇だが、時代遅れのやくざとして仲間に入る天知はいつもの硬質なニヒルぶりを見せ、強烈な存在感と哀愁を放つ。