これまでの特集企画

生誕100年・鈴木清順
野口博志と鈴木清順

――日活撮影所で活躍した二人の映画監督の知られざる師弟関係

上映期間

2023年9月2日(土)〜10月6日(金)

鈴木清順生誕100年に寄せて/岡田裕(映画プロデューサー、元日活)
鈴木さんの映画は面白い。
話の展開も画面も、こう来るだろうと思っていると、まったく違う映像になっている。
しかし、その独特の語り口が、決して奇想天外なものではない。
現実に起こりうることの中からの意外性なのだ。 
映画的というのはそういう事だろう。

野口組のこと/岡田裕(映画プロデューサー、元日活)
野口組はスタッフに人気があった。何故なら撮影が速いから。セットはほとんど5時前に終わり、ロケも夕方には撮影所に帰ってくる。私が野口組についたのはたった1本。「腰抜けガン・ファイター」という作品で、タイトルとはまるで違って、桂小金治がクリーニング屋の店員で、へまばかり繰り返す青春喜劇で、添え物映画だった。野口さんは、朝セットに入ってくるなりズボンを脱いで、セットの奥に用意してある本物のプロのプレス台の所に行き、自分のズボンをプレスしながら「本番行くわよ」と叫んでいた。
鈴木さんが野口さんのチーフをしてた頃のことは知らないが、映画監督が師として付いた先輩監督に学ぶことなんて案外、撮影中のちょっとした冗談くらいの事ではなかろうか。

上映作品リスト

1.

俺の拳銃は素早い』 昭和29年 白黒 監督:野口博志 出演:河津清三郎、日高澄子、伊豆肇、植村謙二郎、石黒達也  *デジタル上映

2.

暗黒街の美女』 昭和33年 白黒 監督:鈴木清順 出演:水島道太郎、白木マリ、二谷英明、芦田伸介、近藤宏

3.

踏みはずした春』 昭和33年 白黒 監督:鈴木清順 出演:左幸子、小林旭、浅丘ルリ子、夏川静江、清川玉枝、宍戸錠

4.

海の情事に賭けろ』 昭和35年 カラー 監督:野口博志 出演:赤木圭一郎、笹森礼子、中原早苗、南田洋子、三島雅夫

5.

峠を渡る若い風』 昭和36年 カラー 監督:鈴木清順 出演:和田浩治、清水まゆみ、金子信雄、二本柳寛、森川信  *デジタル上映

6.

春婦傳』 昭和40年 白黒 監督:鈴木清順 出演:野川由美子、川地民夫、玉川伊佐男、松尾嘉代、小沢昭一

7.

坊っちゃん記者』 昭和30年 白黒 監督:野口博志 出演:小林桂樹、津島恵子、日高澄子、山村聰、伊豆肇  *デジタル上映

8.

悪太郎』 昭和38年 白黒 監督:鈴木清順 出演:山内賢、和泉雅子、田代みどり、小園蓉子、久里千春

9.

東京流れ者』 昭和41年 カラー 監督:鈴木清順 出演:渡哲也、松原智恵子、川地民夫、二谷英明、郷B治

10.

街が眠る時』 昭和34年 白黒 監督:野口博志 出演:長門裕之、中原早苗、安井昌二、宍戸錠、芦田伸介、赤木圭一郎  *デジタル上映

11.

野獣の青春』 昭和38年 カラー 監督:鈴木清順 出演:宍戸錠、渡辺美佐子、川地民夫、香月美奈子、平田大三郎

12.

けんかえれじい』 昭和41年 白黒 監督:鈴木清順 出演:高橋英樹、浅野順子、川津祐介、宮城千賀子、加藤武

13.

拳銃無頼帖  電光石火の男』 昭和35年 カラー 監督:野口博志 出演:赤木圭一郎、浅丘ルリ子、二谷英明、宍戸錠

14.

関東無宿』 昭和38年 カラー 監督:鈴木清順 出演:小林旭、松原智恵子、中原早苗、平田大三郎、伊藤弘子

15.

河内カルメン』 昭和41年 白黒 監督:鈴木清順 出演:野川由美子、和田浩治、佐野浅夫、川地民夫、宮城千賀子

16.

殺しの烙印』 昭和42年 白黒 監督:鈴木清順 出演:宍戸錠、南原宏治、玉川伊佐男、真理アンヌ、南廣

■鈴木清順(すずき・せいじゅん)略歴■本名、鈴木清太郎。1923年東京・日本橋生まれ。43年、旧制弘前高校に入学するが、学徒出陣で応召。復員後の48年に同校を卒業し、鎌倉アカデミア映画科に入学するが、同年9月、松竹大船撮影所の助監督試験に合格。助監督として渋谷実、佐々木康、中村登、岩間鶴男らに就いた。54年、製作再開した日活に移籍し、滝沢英輔、山村聰、佐伯清に助監督として就いた後、野口博志に師事。56年『港の乾杯 勝利をわが手に』で監督デビュー。58年『暗黒街の美女』以降「清順」に改名。プログラムピクチャーの担い手として順調なキャリアを積んでいたが、67年『殺しの烙印』の斬新な映像表現が日活の上層部の逆鱗に触れ、翌年、会社が一方的に契約解除。以後フリーとなり、80年公開の『ツィゴイネルワイゼン』が国内外で多数の映画賞を受賞するなど晩年の代表作とし、また、後年は俳優としても活躍の場を広げた。2017年2月13日死去。享年93歳。

■野口博志(のぐち・ひろし)略歴■本名、野口重一。別名、野口晴康。1913年東京生まれ。慶応義塾大学中退後、35年に日活多摩川撮影所入社。39年『鋪道の戦線』で監督デビュー。その後、松竹京都、大映を経て、54年に製作再開した日活に移籍し、『俺の拳銃は素早い』で監督復帰を果たす。後の日活の屋台骨となる無国籍アクションにつながる暗黒街ものやガンアクションで手腕を発揮し、 赤木圭一郎主演「拳銃無頼帖」や小林旭主演「銀座旋風児」など人気シリーズを生み出した。63年『遊侠無頼』から「晴康」に改名。67年には日活唯一の怪獣映画『大巨獣ガッパ』を監督するなど幅広い作品を任されたが、同年『関東も広うござんす』撮影中に急逝。享年54歳。

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