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2016.7.15

"運命の出会い"や"不慮の事故"を巧妙に演出してくれる『偶然屋』がいるらしい・・・

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"運命の出会い"や"不慮の事故"を巧妙に演出してくれる『偶然屋』がいるらしい・・・

もし、アナタの運命を変えた

あの出会いが偶然でなかったとしたら‥‥‥

 

 司法試験に落ち、就職活動ガケっぷちの水氷里美(みずごおりさとみ)は、ある日、電信柱のしゃがまなければ読めないような低い位置に貼られた、「オフィス油炭(ゆずみ)」という会社の怪しい求人広告を発見する。ワラにもすがる思いで連絡を入れると、面接場所に指定されたのは、なんと錦糸町のパチンコ屋だった!? 疑念を抱きながら約束の時間より早めに入店したが、2時間たっても先方は一向に姿を現さない・・・。

 

‹‹「ファック!」

「その服装はシューカツか」

「すっぽかされましたけどね」

「そりゃひどいな。まっ、それも運命だ。案外、そんなことがラッキーにつながることだってあるかもしれんぞ。たとえばその面接を受けなかったことで、お姉ちゃんは今日死なずに済んだかもしれない」

「なによ? それ」

「いや、だからさ。そういうことがあり得るって話だよ。たとえば面接を受けたその帰り道、交通事故に遭って死ぬかもしれないだろ。つまり面接を受けなければ死ななかったというわけさ。ラッキーじゃないか」

「まあ、たしかに・・・・・・絶対にないとは言い切れないわね」

「だけどな、偶然とか運命だと思っていたらそうじゃないこともある」

「ふうん。そんなことあるかな」

「聞いた話だけど『偶然屋』ってのがあるらしい」

「偶然屋?」

「ああ、あくまでも噂だけどな。偶然を演出するプロらしいぞ」

「なんですか? それは」

「依頼すれば偶然の出会いとか事故とか起こしてくれるらしい」

「偶然って起こすものじゃないでしょう」

「あくまでも偶然に見せかけるということさ。そんなプロがここら界隈にいるって話だ」››

 

 じつは水氷里美の就職試験は、パチンコ屋の69番台に座っているこのときからはじまっていた・・・。

 

 数々のミッションをなんとかクリアして、彼女に与えられたポジションは「"アシスタント"ディレクター」ならぬ「"アクシデント"ディレクター」という聞き慣れない仕事だった。

 

 口に入れた瞬間は甘いのに

 噛めば噛むほど辛味が増してくる・・・

 

 あらすじからコメディタッチのライトなミステリーを想像された方、半分はあっていて、半分は間違い。いい意味で、カクジツに裏切られること間違いナシ!

 

 この小説の真骨頂は第1章の71ページから。突然、舞台は静岡県のある図書館で働く女の過去の話へ。ここから物語は大きく動き出し、「偶然屋」たちの前に、ある悪魔のような男の存在が浮かび上がる・・・。

 

 そこから衝撃の結末までイッキ読み間違いなしのゾクゾク感! ソフトだけどハード。笑えるけど苦い。昨年ドラマ化された『ドS刑事(デカ)』シリーズや、デビュー作『死亡フラグが立ちました!』などのヒット作を凌ぐ、著者にとって新たなる代表作といえる作品!

 

 あなたが今、この記事を読んだのも、この本を手に取るのも、夢中で読んで降りる駅を乗り過ごして出会ったステキな異性も、すべてヤツらの仕業かもしれません。

 

『偶然屋』

著/七尾与史

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