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2016.12.14

若手注目No.1ミステリー作家・芦沢央の最新作は、遺影専門の写真館を舞台にした珠玉の人間ドラマ『雨利終活写真館』

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若手注目No.1ミステリー作家・芦沢央の最新作は、遺影専門の写真館を舞台にした珠玉の人間ドラマ『雨利終活写真館』

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(TBS系・AM9:30〜)
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勤めていた美容院を寿退社したあと、
相手が既婚者だと判明し、
仕事も恋も一気に失った黒子ハナ。
そんな彼女が訪ねたのが、
東京・巣鴨の裏通り、
煉瓦色の外壁のレトロな一軒家、
そこは遺影を専門にした写真館。
 
舞台を巣鴨としたことについて、
「終活が商売の場合の集客力を考えて、
場所はおばあちゃんたちの原宿
と呼ばれる巣鴨が浮かびました。
行ってみると、すごく活気があって
元気な街ですよね。赤いパンツが
バーンと売られていたり、
喫茶店がにぎわっていたり、
お年寄りたちも元気で楽しそうで。
終活がテーマだというと
小説も重くなりがちですが、
この町のエネルギーを作品に
もらえらたら、それも乗り越えられる」
と芦沢さんは思ったという。
 
生前、ここで遺影を撮った
祖母について訊きたいことがあって
訪ねてきたハナは、
守銭奴の終活コーディネーター、
無愛想なカメラマン、
似非関西弁を喋るアシスタントの青年
と出会う。
そして、ある謎が解けたことをきっかけに
ヘアメイクのスタイリストとして
写真館のスタッフに加わるのだ。
強烈な個性をもつ彼らとともに、
訪れた客たちにまつわる、
さまざまな謎に巻き込まれていくハナ。
 
「この小説にはちゃんと遺影を
残すなど終活をして準備を
整える人たちが出てきますが、
でもやっぱり死というものは唐突に、
理不尽にやってくるんだと思うんです。
そうした死とどうやって向き合うかを
書きたかった。
だから、終活を通して自分の問題を
解決していく人たちと、
根底に解決できないものを抱えた
ハナという視点人物を対比させたく
なったんです。突然の死に準備できて
いなくても乗り越える道はきっとある、
と信じたい気持ちがありました」
 
第一話「一つ目の遺言状」では、
ハナの祖母の遺言状が波紋をよぶ。
第二話「十二年目の家族写真」では、
母の死をめぐって、
父と息子の葛藤の日々が始まる。
第三話「三つ目の遺品」は、
妊婦とその夫らしき男性が写った
古い遺影写真の謎。
最終話「二枚目の遺影」は、
末期癌を患う男性が撮った
二枚の遺影写真。
 
どの話も、トリックの真相に向かって
書かれているのではなく、
その背景で揺れ動いている人の心情を
繊細に描き出している点が印象的。
結果的にすべてぬくもりのある
話になっているのは、
そもそも終活というものが、
周囲に対する思いやりを含んだ
行為であるからだろう。
 
「そうなんです。
終活って、優しいですよね。
自分が人生をどう生きてどう閉めるか
ということと同時に、必ず残された
人たちのことを考えて起こされる行動
ですものね。最初から終活する写真館が
舞台なので、嫌な感じで終わる話には
したくないなと思っていたのですが、
とくにこれを書いていた時期は、
読んでいて安心できて、救われる思いのする
話が書きたいという気分だった」
と著者が話すとおり、物語の最後には、
落ち込んでいたハナも前向きな姿勢に
なっていることがうかがえる。
 
「大切な人を喪った後も
生き続けるつらさを乗り越えることを、
少しでも後押しするような力になれば嬉しい」
(インタビュアー・瀧井朝世)
 


『雨利終活写真館』
著/芦沢 央 【あしざわ・よう】

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