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2018.12.16

2度のがん闘病で学んだ「善き患者」であってはいけない理由。『がんに生きる』

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2度のがん闘病で学んだ「善き患者」であってはいけない理由。『がんに生きる』

がんは人を成長させる!!

「生前末期の石原裕次郎とも話し合った。現実を夢だと思えば、苦しみでさえ夢だから、残るのは楽しい夢の感覚しかない」

作詞家として「石狩挽歌」「北酒場」「まつり」」など約4000曲の作品を送り出し、日本レコード大賞、日本作詩大賞ほど、多くの音楽賞を受賞。

その後、作家活動を開始し、2000年「長崎ぶらぶら節」で第122回直木賞を受賞した、なかにし礼氏ですが、じつは二十代から心臓に持病があり、臨死体験も経験。

死ぬときは心臓病で死ぬと信じて疑わなかったそうです。

しかし、2012年、食道がんに罹患してしまいます。

先進医療である陽子線治療を選択し、一度はがんを克服したものの、2015年3月にがん再発。

悩んだあげく、症状の緊急性から手術を選択したものの失敗。

約十ヶ月間生死をさまよった末、抗がん剤治療によって二度目のがんを克服し、現在は三から四か月に一度の割合で定期検診を受けているものの再々発も覚悟しているとのことです。

そんな著者にとって〝がん〟は憎むべきものかと思いきや、本書『がんに生きる』の第一章のタイトルは――――<がんで死にたい>

 

‹‹なぜ、私はがんで死にたいのか? かいつまんでいえば、がんはある意味で情趣を持つ病気であり、なおかつ、かかった人を成長させてくれる性格を持っているから、だろうか。(中略)私自身は、死に対する恐怖心は持たない方であるけれども、病が広がっていく恐怖心はある。しかし、恐怖を感じるからといって、ただ身を縮めているわけではない。当然、がんと闘うし、がんになったことがきっかけで病とは何か、死とは何か、あるいは私とは何か、などといったことを考えるきっかけになる。また、死を覚悟しなければならない状態になったとしても、余生をどう過ごすか、後に残す人たちのために何をしなければならないか、といった「死への準備」をする時間はある。これらは突然やってくる心臓病などの病気では、対応できないことだ。

(中略)現在、がんは不治の病ではなくなったし、それとともに病を抱えながら生と死を考えるのは、人間の新たな成長のきっかけになる。若い人でなく、年老いてがんになった人でも、それは同じだ。››

 

「がんで死にたい」という、真意を詳細に綴ります。

 

第二章では、自身の闘病経験から、医師に従順な「善き人」「善き患者」であってはいけない、と喚起。

どの医師からも「切りましょう」と言われたのに反し、陽子線治療を選んだ理由や、抗がん剤治療のために埋め込まれたポートは〝欠陥品〟の可能性が高いことを厚労省も認めているのに、それを使用するのを黙認するなど、日本におけるがん治療の問題点を指摘します。

 

第三章では、満州での戦争体験で培われた自らの死生観――。

 

第四章では、がんは死へのカウントダウンではなく、新たな人生のスイッチをオンにするチャンスであると力説し、「がんになった。さあ、生きてみよう!」と、がんのネガティブなイメージに光を当てます。

 

がんが発見された人、現在闘病中の方、そしてその家族、すべての方にとって希望となる一冊です。

 

『がんに生きる』

著/なかにし 礼

 

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