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2019.1.31

【第1回】シリーズ累計327万部!最新刊『新章神様のカルテ』〈プロローグ〉の一部を全3回で無料公開中!

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新章 神様のカルテ 第1回

 プロローグ

 春の安曇野は、ひときわ美しい土地である。

 厳しい冬を乗り越えた木々は、明るい日差しの下に伸びやかに枝を伸ばし、淡い霞に柔らかな緑を投げかける。見上げれば北アルプスの稜線にはなおまだ残雪が、厳冬の名残りを示して燦然と煌めいているが、足下に視線を落とせば、連翹、山吹、鈴蘭、牡丹とはっとするほど艶やかな色彩が開き始めている。

 この土地は春が短い。

 季節は、冬から一足飛びに夏へと飛び込んでいく。その束の間のうちに、春の躑躅も夏の菖蒲も一斉に花開いて、文字通り百花繚乱となるのである。

 そんな華やいだ春景色の中で、私は額に手をかざして眼前の建物を見上げた。

 『長野県立信州こども病院』

 日差しの降り注ぐ明るいエントランスの上に、そんな文字が並んでいる。

 安曇野のただ中に赤い屋根を連ねて建つこの病院は、緑に包まれたこの季節に眺めると、なにか芝地に積み木のおもちゃを並べたかのように愛らしい作りに見えるのだが、中身は純然たる医療施設で、甲信地方一帯における高度小児医療の一大拠点なのである。

【つづく】

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