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2019.3.2
国民的タレント・ウッチャン初の書き下ろし!内村光良長編小説『ふたたび蝉の声』
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54年分の想いを噛みしめながら書いた群像劇。
五十歳を目前に控えた進は、役者という職業を細々と続けながら、東京で暮らしている。
大学在学中に劇団のオーディションに合格。
役者一本では生活が成り立たず、四十代になるまでは、バイトをしながら食いつないできた。
最近ようやく順調に仕事が入るようになったが、妻と娘のいる家庭内では、どうにも居心地の悪さを感じるようになった。
ときどき、ふと漠然とした不安を感じることがある。
‹‹この先の自分は一体どうなっていくんだろう。
進には妻と娘がいる。娘が大きくなって最近は会話することも少なくなった。小さい時はそりゃあ可愛かった。休日二人で遊ぶのが何より楽しみだった。
この公園でもよく遊んだ。よちよち歩きをビデオに収めた。ブランコも最初はおっかなびっくりだったがみるみる上達していく。ある日スイスイと当たり前のように立ち漕ぎしている姿には、月日の速さを感じたものだ。
補助輪をはずして初めて二輪の自転車に乗れた日のことは今でも忘れない。荷台を掴んでいた手を放してヨロヨロと20メートルくらい一人で乗れた時、倒れた自転車を放ったまま「やったあ~!」と抱きついてきたあの瞬間の幸福は一生忘れないだろう。
でも二日前「臭い」と言われた。高校生の娘に「臭い」とただ一言。煙たがる目を向けたまま娘は学校へ出かけていった。
もうあのような幸せは二度とやって来ないのか。
妻の方はと言えば、娘が大きくなったことで自由な時間が出来たのだろう。テニスや英会話、最近は乗馬クラブにも通い始めたようで日々忙しく過ごしている。一体何人と連絡を取り合っているのか、LINEのやりとりがひっきりなしだ。慣れた手つきでタタンタタタタと器用に打ちまくっている。夫婦の会話もずいぶん少なくなった。進の仕事が忙しくなったのも要因の一つだろうが、二人きりの空間が最近はどうもムズムズして落ち着かない。
例えば自宅マンションの狭い廊下ですれ違って肩が触れ合いそうになった時、何とも言えない遠慮心で咄嗟に避ける。
例えば洗面所のドアを開けると風呂から上がったばかりの裸体に遭遇し、申し訳ない気持ちいっぱいで素早くドアを閉める。
そんなむず痒い距離感になってしまっている。
用もないのにベランダに出たり、散歩に出かけたり。今日も結局二人きりの空間が居づらくて、こうしてジャージに着替えて公園にやってきている。››
このまま代り映えのしない人生が続いていくのだろうか。
いつから自分は都会の生活に慣れてしまったのだろうか。
老いていく父と母。
小さい時からよく面倒をみてくれた姉。
故郷で一緒に育った友人。
そして、妻と娘。
進の人生に関わる様々な人がいる。
それぞれ、想いや悩み、そして幸せと不幸を抱えている。
でも、どこかで重なり、繋がり、そしてお互いの人生に何かのきっかけを与え続けていく――――。
〝人生は、長いようであっという間〟
昭和、平成を必死に生き、翻弄され、迷いながらも〝家族〟や〝人生〟と向き合い、支え合った人々を描いた群像小説。
全国の書店員さんから絶賛の声続々!
僕らが待ち望んでいた最強の感涙本ですね!
――三省堂書店有楽町店・内田剛さん
物語が細胞に染み渡っていくのを感じました。それはとても贅沢で幸福な「点滴」です。
――金高堂土佐山田店・髙橋学さん
著者から直筆メッセージが届いています。
いろいろあるけど、
また、前に進もうと思う
著/内村光良
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