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2020.11.1

生来の奴隷少年が「自分は何者か?」を追い求めて終わりのない冒険へ。『ワシントン・ブラック』

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キーワード: 小説 冒険 BLM

生来の奴隷少年が「自分は何者か?」を追い求めて終わりのない冒険へ。『ワシントン・ブラック』

2018年スコシアバンク・ギラー賞受賞

2018年マン・ブッカー賞最終候補

ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、タイム他多数有力メディアの「トップテン・ブック・オブ・ザ・イヤー」に選出

「おまえはね、すごい人生を送ることになるよ」

1830年、イギリスの植民地だった西インド諸島・バルバドス島。

11歳の黒人少年「ワッシュ」ことワシントン・ブラックは、生まれながらの奴隷だ。

親を知らず、幼少の頃から鍬をふるい、サトウキビを刈りとることがすべてだった。

ところが、ある日、農園主の弟ティッチがやってきたことから、ワッシュの運命は動き出す。

 

«「おれは兄に、おまえを永遠に解放してくれるよう頼もうと思っている」ティッチは言って、ぼくの顔をじっと見つめた。「どうだい、いやか?」

ぼくは驚きのあまり言葉も出なかった。

「どうしたい、今後も兄の所有物のままでいたいのか?」

「いいえ、ティッチ、それよりぼくは、あなたの所有物でいたいです」ぼくは熱っぽく言った。そのときティッチが浮かべた苦渋の表情の意味が、そのときのぼくには読みとれなかった。

「そうか。ま、この件については、また後で話そう、ワッシュ。うん、そうしよう」

でも、ティッチはどこか困惑した表情を浮かべていた。まだ幼稚だったぼくには、その理由が理解できなかった。自分では、ティッチが喜んでくれることを言ったつもりだったのである。»

 

ティッチの助手となったワッシュは、文字や科学の知識を学び、絵の才能も開花させる。

やがてある事件を機に、ふたりは自作の気球で島から脱出し、北極をめざす。

が、途中で失敗、帆船に助けられ、アメリカへ。

一人の少年の数奇な運命、世界を股にかけた大いなる冒険、自我の目覚め・・・アフリカ系カナダ人の女性作家による、傑作歴史冒険小説。

 

翻訳は「ヘミングウェイ全短編」「日はまた昇る」「武器よさらば」「誰がために鐘は鳴る」などの訳書をもつ高見 浩氏。

「ワッシュの冒険に胸躍らせながら、混迷する現代の、いまなお熱くたぎる深淵をも覗き込むことになる読書体験。これほどに興趣豊かな本にはめったにお目にかかれない、と胸を張って言える一冊である」(訳者)

 

『ワシントン・ブラック』

著/エシ・エデュジアン 訳/高見 浩

 

【著者プロフィール】

エシ・エデュジアン

カナダ・アルバータ州出身。ヴィクトリア大学で学び、2004年に『The Second Life of Samuel Tyne』でデビュー。2011年、『Half-Blood Blues』でカナダ最高峰の文学賞スコシアバンク・ギラー賞を受賞。2018年、本作で再び同賞を獲得。

 

【訳書プロフィール】

高見 浩(たかみ・ひろし)

東京生まれ。出版社勤務を経て翻訳家に。主な訳書に『ヘミングウェイ全短編』『日はまた昇る』『誰がために鐘は鳴る』『老人と海』(E・ヘミングウェイ)、『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『カリ・モーラ』(T・ハリス)、『カタツムリが食べる音』(E・T・ベイリー)、『眺めのいい部屋売ります』(J・シメント)、『北氷洋』(I・マグワイア)など。著書に『ヘミングウェイの源流を求めて』がある。

 

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