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2021.1.24
2つの旅と10年にわたる旅の記録が分断された社会を繋げる。『ルンタ』
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キーワード: 旅 旅行記 チベット 写真家
標高4000メートル、マイナス20度、写真家をあえて厳しい環境へ向かわせた理由とは?
旅行記「The Songlines」から6年。
写真集「Kor La」から4年。
待望の続編にして完結編。
足かけ3年、チベット仏教圏を巡った祈りの旅の記録――。
旅のはじまりから10年、写真家・竹沢うるまの壮大な旅の記憶を記す。
«薄暗い海の底に沈む記憶たち。初めは何もなく鏡のように凪いだ水面にわずかばかりの波紋が生まれたかと思えば、ゆっくりと淡い陰影が浮かび上がり、やがて忘れ去られた記憶が海底からゆらゆらと浮上してくる。私は腕を伸ばし記憶を手に取り、観察する。それが旅のどのパーツなのか。記憶の断片を手のひらに載せて心を静めると、旅の空気が私を包み込む。
記憶のサルベージである。しかし、それは自発的に行うことができない。何かしらのきっかけが必要なのだ。それがどこにあるのかは自分でもわからない。あるときは大事な仕事の打ち合わせをしているときに、あるときは食事中に、またあるときはふと夜中に目が覚めた瞬間に。
私が記憶を呼び起こすのではなく、記憶が私を呼ぶのである。»
(本書「序章 春の花」より)
本書のタイトル『ルンタ』とは風の馬のこと。
チベット仏教圏で目にする赤、白、緑、黄、青の五色の旗。
タルチョと呼ばれるその旗には、経文とともに風の馬が描かれている。
ひとたび風が吹けば、祈りはルンタとともに風に乗って大地を駆け、世界の隅々まで行きわたる。
彼の地では、そう信じられている。
ダラムサラ、スピティ、ムスタン、ザンスカール・・・標高4000メートルを越える高所に、あるいはマイナス20度を下回る厳冬期にと、あえて厳しい環境下へ向かわせた出来事とは一体何だったのか。
そして、この旅で著者本人の心にどんな変化が起きたのか。
たゆたう心の水面を、鋭い観察眼をもって綴る。
«本作は、旅の記録をまとめた写真集「Kor La」(小学館)と対になるものである。
同時に、二〇一〇年から二〇一二年にわたる旅の軌跡をまとめた旅行記「The Songlines」(小学館)の続編ということになる。前作の終わりが、本作の始まりとなっている。
この本を書き上げることにより、「The Songlines」から続く長い旅が終わることになる。三〇代の一〇年間、私はほとんどの時間を旅することに費やした。私が何故これほどに旅の世界に身を置いてきたかという理由は、四〇代になったいま何となくわかっているつもりである。恐らく、私は「生きている」という実感を得たかったのだと思う。そのためにただひたすら旅をしてきた。»
(本書「あとがき 青い風」より)
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著/竹沢うるま
【著者プロフィール】
竹沢うるま
1977年生まれ。写真家。同志社大学法学部法律学科卒業。在学中、アメリカに一年滞在し、独学で写真を学ぶ。2004年独立。写真家としての活動を本格的に開始。これまで訪れた国と地域は150を超す。2010年~2012年にかけて、1021日103か国を巡る旅を敢行し、写真集『Walkabout』と、対になる旅行記『The Songlines』を発表。その後、写真集『Kor La』をまとめた。2014年には第3回日経ナショナルジオグラフィック写真賞グランプリ受賞。2015年に開催されたニューヨークでの個展は多くのメディアに取り上げられ現地で評価されるなど、国内外で写真集や写真展を通じて作品発表をしている。
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