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2022.8.29

アルバイトは正社員を「アマゾン様」と呼ぶ。『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』

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キーワード: 時事 社会 小売 物流 Amazon 潜入取材 新潮ドキュメント賞受賞

アルバイトは正社員を「アマゾン様」と呼ぶ。『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』

潜入ジャーナリストが見た〝便利の裏側〟とは?

アマゾンがあらゆる企業や産業をのみ込み、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、家電量販店などの競合店が窮地に追いやられることを意味する言葉「アマゾン・エフェクト」。

コロナ禍において、〝世界最大の小売企業〟アマゾンによる日本市場制圧は、ますます進んでいる。

しかし、これだけ社会に大きな影響を与えているのに、アマゾンの実像はなかなか見えてこない。

そこで、かつて『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』を執筆するためアマゾンに潜入し、センセーションを巻き起こしたジャーナリストの横田増生氏が、誰でも受かる面接を受け、日本で一番大きな小田原の物流センターに潜ることを試みた。

 

«「いくつかの条件があるんです。まずは、週20時間以上働いてもらわないといけません。また1カ月間で当日の電欠(電話連絡による欠勤)は、1日までとなっています。ですので、絶対出勤できる確実なところでシフトを提出してください。アマゾン様は、欠勤により働く人が足りなくなることを非情に嫌います。この2つの条件をクリアすると、ホリデープレミアを支払わせていただきます。これまでアマゾン様で買い物をしたことがあるでしょう?」

私が気になったのは、「アマゾン様」という尊称だ。

最初の潜入時、アマゾンのことを当時の下請け業者であった日本通運は、「アマゾンさん」と呼んでいた。時がたち、今や「アマゾン様」に格上げである。その後に私が会うアルバイトたちも、「アマゾン様」と呼んでいた。個人的には、「アマゾンさん」までは、なんとか許容範囲であったけれど、「アマゾン様」となると気色が悪い。»

(本文より)

 

果たして、アマゾンの巨大倉庫では何が起きているのか。

日々の生活用品をほとんどアマゾンで買いそろえ、アレクサに頼んでニュースを聞き、映画はアマゾンプライムで観て、漫画や小説はキンドルで読む。

どこにでもいるアマゾンユーザーに過ぎなかった著者が、即日配送、カスタマーレビュー、マーケットプレイス、AWSなど、アマゾンのさまざまな現場に忍び込み、「巨大企業の光と影」を明らかにしていく。

 

«本国アメリカでは、アマゾンの物流センターでの低賃金に強く異議を唱える政治家のおかげで時給が大幅に増えたし、物流センターでの労災隠しを暴く調査報道がみられる。22年には、ようやく全米で初となる労働組合も結成された。

ヨーロッパでは、アマゾンをはじめとするIT企業を対象とするデジタル課税が動き出し、EUは、個人データの使用方法に規則違反があったとしてアマゾンに制裁金を科しているし。

翻って日本では、アマゾンの動きを熱心に追及するメディアはほとんど見当たらず、アマゾンの野放図な経済活動にくさびを打ち込もうとする官僚や政治家もほとんどいない。果たして、このままでいいのか。日本は、アマゾンの便利さを享受している間に、アマゾンに飲み込まれていくことにはならないのだろうか»

(新書版「まえがき」より)

 

私たちはこのまま何も実態を知ることなく、「アマゾン帝国」に支配されていくのだろうか・・・日本人に大きな問いを投げかける第19回新潮ドキュメント賞受賞作。

 

〈目次〉

新書版まえがき

はじめに

第1章 15年ぶり2度目の巨大倉庫潜入

第2章 アマゾンではたらく社員の告発

第3章 宅配ドライバーは二度ベルを鳴らす

第4章 ヨーロッパを徘徊するアマゾンという妖怪

第5章 ジェフ・ベゾス あまりにも果てなき野望

第6章 わが憎しみのマーケットプレイス

第7章 フェイクレビューは止まらない

第8章 AWSはAIアナウンサーの夢を見るか

第9章 ベゾスの完全租税回避マニュアル

第10章 〝デス・バイ・アマゾン〟の第一犠牲者

おわりに

 

小学館新書

『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』

著/横田増生 

 

【著者プロフィール】

横田増生(よこた・ますお)

ジャーナリスト

1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。93年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。99年よりフリーランスとして活躍。2020年、本書の元となる『潜入ルポamazon帝国』で第19回新潮ドキュメント賞を受賞。その他の著書に、『仁義なき宅配』『ユニクロ潜入一年』など。最新刊は『「トランプ信者」潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』。

 

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