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うちのアトリエにはポケモンのぬいぐるみが30匹程います。このぬいぐるみは、私達が子どもの頃、おばあちゃんが縫ってくれた手作りのものです。当時10歳。私達はポケモンが大好きでした。

平成元年生まれの私達にとって、ポケモンは「子ども時代」そのものです。1996年からポケモンが社会現象となっていくその真っただ中に、アニメの主人公のサトシくんと同じ10才の私達はいました。

ポケモンを見ると、同時に、あの頃見ていた景色が思い起こされます。登下校の道、友達の声、草むらの匂い、森の中の秘密基地、おでこに光る汗、大きな入道雲。心や頭で見ているものと、実際に存在しているものが、トロトロと混ざり合い、世界は広々と、夢幻的で、美しかったように思います。

この「子ども時代」の感覚を、私達は作品をつくる上で大切にしています。ポケモンは私達の制作衝動の原点の一つなのです。

しかし、私達には不安に思う事があります。ゲームやインターネットを見て育った子どもは実体験の乏しい、軟弱な人間になると聞きます。平成の子どもたちは遊び場が減って可哀想だと、哀れまれることもあります。私達は、不幸な「子ども時代」を過ごしてしまったのでしょうか。そうなのかもしれません。

しかし、自分の子ども時代を否定したくはありません。あの頃、夢中になって読んだ本も、友達と走り回った草むらも、木登りも、漫画も、映画も、ゲームも、インターネットも、日常全てが、大切な思い出です。一瞬で過ぎ去る「子ども時代」に、様々な経験をして、色々な考え方ができるようになる事が、子どもたちにとって最も大切な事だと思います。

いつかやってくる大人の時代にも、その力は心の支えとなってくれるはずです。私達の「子ども時代」が不幸だったのか、幸福だったのか、それは大人になった私達が作っていく、これからの世の中で決まってくるのだと思います。

この様な心の有り様を絵本の形にして吐き出しました。皆様に何か感じて頂けたら幸いです。

ザ・キャビンカンパニー
阿部健太朗/吉岡紗希