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2017.2.7

「ひとりで生きてみせる」など幻想に過ぎない――作家・曽野綾子はそう述べる。この世に安心を求め、約束することの愚かさを説く。『老境の美徳』

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「ひとりで生きてみせる」など幻想に過ぎない――作家・曽野綾子はそう述べる。この世に安心を求め、約束することの愚かさを説く。『老境の美徳』

曽野綾子氏の「老人考察」に

注目が集まっています!

 

‹‹今、総理の「一億総活躍社会」という言葉を笑っている人は、

多分、老人世代の介護をしたことのない人だろう。

老人は日々生きて行くのに人手なしにはできない。

しかもその自覚がほとんどない。

老人になって初めて、人は一人で生きていけないことを知るのである。

それまでは、一人で生きてみせるなどと児戯に等しいことを言っている››

 

「人間の分際」「人間にとって成熟とは何か」「老いの才覚」など、

「生き方・老い方」について綴ったエッセイが立て続けに

ベストセラーとなった曽野綾子氏。

本書でも、「高齢者の生き方」について、曽野氏ならではの鋭い視点が光ります。

 

‹‹坂道のある丘のどこかの、景色のいい場所に家をつくると、

まもなく三、四十年ほどで老年期がくる。

すると、坂道というものが実に大変なものだということがわかってくる››

 

‹‹坂を登ったところにある墓地は、まもなくそこへお参りに行けなくなる››

 

‹‹人には決して強要しないけれど、

私はいつか湯船に入ることを諦める日を、自分で決めようと考えている。

その代わりまるで電話ボックスのような形で、中にゆったりと座る場所もあり、

上から経済的にお湯の降ってくるシャワーのような装置が欲しい。

人を湯船に入れようと思うから人手も装置もかかる››

 

‹‹もし今晩食べるものがないとしたら、若者の態度なんて全く気にならないはずだ。

若者に不満を抱えている年寄りは、まず自分が「不満をもてるほど」の

恵まれた環境にいることに感謝したほうがいい。

年を重ねたから敬われるなんて理由は何一つない››

 

84歳の現在も各紙誌で多くの連載を持つ著者の忌憚のない「老人考察」は、

きれいごとや建前論とは一線を画す"すがすがしさ"があります。

曽野氏はまた、安心を保証しようとする社会風潮にも疑問を呈します。

 

‹‹毎日の社説は、私がかねがね「不正確の極み」と言い続けている

表現もまだ平気で使っている。

「安心して出産や子育てができる」という常套句だ。

この世に、安心してできることなど一つとしてなく、一瞬もない。

これほど明瞭なことは大学を出なくてもわかるのに、

まだ世間は「安心して暮らせる」ことを要求している››

 

‹‹「安心して子供を産める環境を作らなければ、

子供は生まれないのだ」などと言うのは、基本的に違う。

育児施設がないから子供を産めないのは当然と言うのは、

世界中の貧困社会に対する無礼だろう››

 

豊かさで目がくもった日本社会と日本人の"甘え"の構造を浮き彫りにする一冊!

 

『老境の美徳』

著/曽野綾子

 

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