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2017.10.24
「落語の笑いは世界共通、みんな同じところで笑ってくれる」『空気の読み方、教えてください カナダ人落語家修業記』
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キーワード: エンタメ 落語 お笑い 桂文枝 日本文化
世界各国で落語公演を行う、戦後初の外国人落語家!
歌舞伎と能の勉強のために来日したカナダ人劇作家が、初めて聴いた落語に魅了され、落語家になることを決意。桂三枝(現・六代桂文枝)に、土下座で
弟子入り志願します。
しかし、晴れて許された日本での修業は驚きと戸惑い、失敗の連続でした。
文化、習慣の違いから、欧米では当たり前と思ってしたことで叱られ、良かれと思ったことで迷惑をかけ・・・。
何より、「師匠と兄弟子の空気が読めれば、お客の空気も読める」という教えは、カナダ人の著者にとって想像を超えたものだったようで・・・。
‹‹食事については、お兄さんからいろいろなルールを教わりました。
たとえば、師匠と弟子が一緒に外食をするとき。お金を払うのは師匠なので、メニューも基本的に師匠が決めますが、「おまえたち、自由に選べ」と言われることもよくあります。そんなときに、どのメニューを選んだらいいのか。
お兄さんのアドバイスは、「値段が下から二番目くらいの、ボリュームのある料理を選びなさい」でした。
師匠にごちそうになるのですから、値段の張る料理を頼むのはもちろん遠慮しなければいけません。兄弟子よりも高い料理もはばかられます。かといって、値段が一番下の料理は、ちょっとあからさま過ぎる。そこで、下から二番目くらいがちょうどよい――というわけです。
そして、料理のボリューム。あまり少ないと、体調が悪いのかと師匠に余計な心配をかけてしまいます。ですから、量の多い料理を選んだほうがよいのです。
ときには兄弟子が厚意で、「おまえはカナダ人だから、肉が好きだろう」と私に肉を分けてくれることもあります。ですから、私の皿には、ボリュームのあるメインディッシュに加えて、お兄さんから分けてもらったおかずまでもが載っていることがしばしばありました。もちろん、私は弟弟子ですから、全部残さずに食べなければいけません。
このシステムは、食べ盛りの若い弟子にはよいですが、四十歳を目前にした私には、なかなか辛かった(笑)。目の前の料理を片付けるのに、いつも悪戦苦闘していました。››
そのほかにも、
「食事は師匠が食べ終わる3分前に済ませる」
「深夜でも師匠が帰るまで事務所で待機」
「兄弟子より目立つ着物を着てはいけない」
「師匠に〝Thank You〟は失礼?」
「お礼の言い回しは47通り!?」・・・・・・など、腑に落ちないことの連続。
戦後初の外国人落語家として活躍する桂三輝(かつら・さんしゃいん)が初めて明かす、笑いと涙の異文化修業奮闘記です。
2013年以降は、日本文化の素晴らしさを世界の人にもっと知ってもらおうと、カナダやアメリカ、イギリスなど世界各国で熱心に落語公演を行っています。
‹‹アメリカのある大学で落語公演をしたときのことです。その日のお客さんのノリはとてもよく、爆笑につぐ爆笑のうちに幕が下りました。
舞台がはねた後で、一人の大学院生が私のところへ来て、こう言いました。
「私はこれまで七年間、日本文化を研究してきました。でも日本人がこんなに面白いなんて、まったく知りませんでした」
いや、私は日本人ではなくて、カナダ人ですが・・・・・・と私は心の中で突っ込みました。
それはさておき、落語という文化は、もっと海外のたくさんの人に知られてよいと思います。››
「落語の笑いは世界共通、みんな同じところで笑ってくれる」とニコニコしながら語る著者。
また、ある大阪出身・海外在住の方からは「あなたの英語落語は大阪弁に聞こえる」と言われたそうです。
落語をどう翻訳して笑いをとっているのかと、興味を持たれる方も多いのではないでしょうか。
そのあたりの苦労話も、本書にはふんだんに盛り込まれています。
著/桂三輝
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