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2019.8.6

13歳の誕生日、この世界を出て行かなくてはならない。『ぼくたちは卵のなかにいた』

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13歳の誕生日、この世界を出て行かなくてはならない。『ぼくたちは卵のなかにいた』

図書館はなぜ、なつかしいような物悲しいようなにおいがするのか・・・

正直者のリョウ、天才肌のミサキ、活発なナオト。

彼らが住んでいる卵のなかには、山も、海も、町もあって、電車も走っている。

平和で楽園のような世界だ。

けれども、十三歳の誕生日。

この世界を出るのか、とどまるのか決めなくてはいけない。

出ていくことを決めた子たちは、この世界で過ごした日々を一冊の本にして、図書館に残していく。

 

‹‹「図書館って、なんか独特なにおいがするよな」

「独特なにおいって、このにおいのこと?」

ミサキはそう聞き返すと、一度大きく息をすって、目を細めた。

そのときぼくたちは、それぞれ目当ての一冊を求めて、図書館の棚と棚のあいだに立って、本の背表紙を順番に読んでいるところだった。

「うん、なつかしいような物悲しいようなにおいっていうか、なつかしいような物悲しい気持ちになるにおいっていうか」

「だってここは図書館だもの。ここにあるすべての本には、書いた人、ひとりひとりの記憶がつまっているんだもの」

だからそういうにおいがして、そういう気持ちになるのは当然だというように、ミサキは答えた。

「そんなことは、ぼくだってわかってるよ。だから、なつかしいって言うのはいいんだよ。問題は物悲しい気持ち、そっちのほうさ。だって、記憶っていうのはたいがい楽しいことばっかじゃないか」

と、ぼくは言った。

「ああ、なんにもわかってないなあ」

あきれた、という顔をしてミサキは言った。

「楽しい思い出のほうが、思い出したときに悲しくなることもあるじゃない」

「えっ、なんで? 楽しい思い出はいつ思い出したって楽しいけどね」

と、ぼくは言った。

「リョウは単純だからね。でも、考えてみてよ。ここにある記憶、ここにある思い出は、ここに置いていくしかないものなのよ。本のなかに。リョウだって、そのことは知ってるでしょ?」››

 

これまでの自分とは違う自分、そして、世界。

彼らは、どんな決断をし、なにを見つけるのか?

そして、あなたは読み終えたあと、どんな〝卵〟が心に芽生えるのか?

 

「すみれちゃん」シリーズや「わたしちゃん」などの著書をもつ石井睦美が、大人になるまえの子どもたちに贈る物語。

あたたかく幻想的な絵はアンマサコ

読書感想文にも最適の書です。

 

『ぼくたちは卵のなかにいた』

著/石井睦美 絵/アンマサコ

 

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