03 「高齢化社会」
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「高齢化社会」を0から考えよう。

人生100年時代に寄り添う、介護のリアルな情報と知恵をポータルサイトに

人生100年時代に寄り添う、介護のリアルな情報と知恵をポータルサイトに
超高齢社会を突き進む日本。2025年には、高齢者の割合が全人口の30%を超える見込みで、介護問題は深刻化の一途をたどっている。そんな中、小学館の総合ニュースサイト「NEWS ポストセブン」から派生したWebメディアが、介護情報に特化した「介護ポストセブン」。いま、私たちに必要な介護や福祉への姿勢とは?サイト開設時からコンテンツ作成に携わる関和子に、話を聞いた。

介護は社会全体で取り組むべきテーマ。みんなで考えるためのWebメディアを

『週刊ポスト』や『女性セブン』を刊行している小学館。「取材に基づく確かな情報を発信する」という週刊誌ならではの信念を基に、Webメディアでも分野に特化した情報発信を続けています。2016年からスタートした「介護ポストセブン」もその一つ。なぜ「介護」というテーマに挑戦したのでしょうか?
「介護ポストセブン」では、“みんなで考える、家族のこと、自分のこと”をキャッチフレーズに、介護に役立つ情報や、健康や暮らしのアイデアを中心に、幅広い情報を日々発信しています。
介護制度、施設ガイド、お金や健康情報、著名人による人生相談も発信。介護に関心のある多くの人に利用されている。
介護制度、施設ガイド、お金や健康情報、著名人による人生相談も発信。介護に関心のある多くの人に利用されている。
このメディアを立ち上げる以前から、私はポスト・セブン局でメーカーやサービス業など他企業とのコラボレーション企画などを担当しています。そこでヒアリングをしている中で、さまざまな企業がこれからの超高齢社会でどのように社会課題を解決していくか、真剣に考え、向き合っていることを知りました。同様に週刊誌の現場でも、親や家族の介護、自分自身の将来に対する読者の不安の声がたくさん届いていて、誌面でも介護にまつわる企画に大きな反響をいただくようになりました。

当時から、介護に関する情報は届きにくく、介護は「暗く辛いもの」と捉えられがちだったと思います。公的制度もわかりにくく、プライバシーの関係もあり、困っている状況が顕在化しにくい状況でした。しかし実際は、前向きに介護をする人もいますし、介護生活を支えるさまざまなサービスがあります。これまでなかなか届かなかった有益な情報をより多くの人に伝え、介護のイメージを変えたいという思いから、介護に特化した情報サイトを立ち上げることにしました。

丁寧な取材を通して、信頼できる情報を届けたい

毎日3〜5本の記事を公開している「介護ポストセブン」。正確な情報をコンスタントに届けられているのは、「週刊ポスト」「女性セブン」の編集部と共に、一丸となって取り組んでいるからだといいます。コンテンツをWebサイト上に掲載するうえで、心がけていることとは。
「介護ポストセブン」で掲載される記事は、「週刊ポスト」や「女性セブン」で掲載された記事をもとにしたものと、サイトオリジナルの記事があり、6:4の割合で構成されています。週刊誌に掲載されている特集記事は、長い時間をかけて取材し、丁寧につくられています。その良さはそのままに、小見出しなどを工夫し、元々活版記事でモノクロだった写真もカラーで掲載。Webサイト上では、より生きた情報として読んでいただく工夫をしています。
2021年3月には、介護に特化したムック本『介護読本』が刊行され、「介護ポストセブン」のオリジナル記事も掲載されている。
2021年3月には、介護に特化したムック本『介護読本』が刊行され、「介護ポストセブン」のオリジナル記事も掲載されている。
一方でオリジナル記事では、高齢で元気に活躍されている著名人へのインタビューをはじめ、親や家族の介護をしている人が発信するエッセイやマンガ、脳トレなどの連載に力を入れています。Webサイトは、知りたい情報を検索して、パソコンやスマホなどでいつでも読んでいただけるものです。気軽にアクセスできるからこそ、介護や病気、死など、センシティブなテーマを扱うときは、記事を読む方が不快な気持ちにならないよう、表現に気を使っています。
「死というテーマは、読者にネガティブな気持ちになってもらいたくないという思いから、最初の2年は扱わないようにしていました。しかし死は誰にでも訪れるものです。恐れよりも、どのように受け止め乗り越えるかに目を向け、前向きなマインドを伝えていくことこそが、私たちのミッションなのだと考えるようになりました」(関)
「死というテーマは、読者にネガティブな気持ちになってもらいたくないという思いから、最初の2年は扱わないようにしていました。しかし死は誰にでも訪れるものです。恐れよりも、どのように受け止め乗り越えるかに目を向け、前向きなマインドを伝えていくことこそが、私たちのミッションなのだと考えるようになりました」(関)

それぞれの思いを伝え、交流できる場へ

介護にまつわる情報の需要が増していく中で、「介護ポストセブン」はどのように読者に寄り添っていくのでしょうか。これからのビジョンを聞きました。
サイト開設の1年後から、各記事にコメントがつけられるようにコメント欄を設けたのですが、そこにたくさんの共感や切実な悩みの声が寄せられるようになりました。シニア世代と思われる方や、介護経験のある方など、当事者としての体験談が語られることもあり、「介護ポストセブン」が読者の方々にとって、抱えていた思いを発散し、心を整理する場所になっているのだと実感しています。
毒蝮三太夫さんの隔週連載では、ご相談フォームが設置されている。読者から寄せられた相談に対する毒蝮さんらしいコメントと激励が人気。
毒蝮三太夫さんの隔週連載では、ご相談フォームが設置されている。読者から寄せられた相談に対する毒蝮さんらしいコメントと激励が人気。
実際に、毒蝮三太夫さんの連載をはじめ、サイト内で読者との交流の場を設ける動きもはじまっています。今後は執筆陣によるセミナーや講演会、読者同士が語りあえる介護カフェなど、リアルな場づくりにも発展させていきたいですね。
「私自身も親の介護がはじまり、自分と家族の健康やお金など、将来への不安を当事者としてリアルに感じるようになりました。介護の問題を1人で抱える辛さを実感したからこそ、なおさら読者の気持ちに寄り添い、本当に困っていることはなにか、役立つ情報はなにかを考え伝えていきたいと思っています」(関)
「私自身も親の介護がはじまり、自分と家族の健康やお金など、将来への不安を当事者としてリアルに感じるようになりました。介護の問題を1人で抱える辛さを実感したからこそ、なおさら読者の気持ちに寄り添い、本当に困っていることはなにか、役立つ情報はなにかを考え伝えていきたいと思っています」(関)

これからの100年に向けて

2040年には、日本で65歳以上の高齢者が人口の1/3以上を超えるといわれています。これからの100年に向けて、課題は山積み。これまで知られていなかった課題にも焦点を当てていくなど、今後さらに必要になってくることとは?
誰もが老後を安心して暮らせる社会を実現するためには、世の中にたくさんある課題について、高齢者も、若い人も、国や自治体、企業も、みんなで考えていく必要があります。介護にまつわる情報を発信する者として、真に読者に寄り添うためにも、自分自身の親の介護と仕事の両立を全うする必要も感じています。
「入社当初から“読者さんを第一に”と教えられてきました。小学館は、出版社として、雑誌や書籍を軸により多角的に発信する役割をますます担う時代になったと感じています」(関)
「入社当初から“読者さんを第一に”と教えられてきました。小学館は、出版社として、雑誌や書籍を軸により多角的に発信する役割をますます担う時代になったと感じています」(関)
これからは、若い年代で介護に携わる人も増えてくるでしょう。介護離職せざるをえなかった人やヤングケアラーなど、家族の介護を理由に苦しい状況に陥ってしまっている人、小さいお子さんの介護をしている若い親御さんなどにもフォーカスを当て、発信を広めていきたいですね。
関 和子
ポスト・セブン局 アドバトーリアル室