06 「街の歩き方」
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コンテンツとテクノロジーが出会うことで生まれる、小学館ならではの未来の街の歩き方

コンテンツとテクノロジーが出会うことで生まれる、小学館ならではの未来の街の歩き方
民間月面探査プログラムHAKUTO-Rのメディアパートナーに参加するなど、出版領域以外の新しい挑戦にも積極的に取り組んできた小学館。デジタル技術の進展によって、XR領域とよばれる世界の中でもその挑戦の芽は生まれている。この新領域のコンテンツと私たちの暮らしが結びついたとき、どのような新しい体験が生まれるのか?XR事業推進室の四竈泰介に、プロジェクトへの想いを聞いた。

街そのもののポテンシャルを可視化するために

「XR」は、現実世界には存在しないものを表現し体験するための、あらゆる技術の総称です。この新しい領域に積極的に取り組むため、小学館では2021年10月、デジタル事業局にXR事業推進室を新設。その第1弾としてスタートした企画が、街の情報をスマートフォン越しに見ることができる、「ARタウン」でした。
四竈
「ARタウン」は“まちがもっと好きになる”をテーマに、街の中のさまざまな情報を知りながら、コンテンツやエンターテインメントを楽しむためのプロジェクトです。昨年10月にプロジェクト概要を発表したときは、各所から問い合わせを多くいただき、この領域への期待値の高さを感じました。
街のメディア化を実現する「ARタウン」。
街のメディア化を実現する「ARタウン」。
四竈
将来的には「ARタウン」を活用することによって、街にスマホをかざすだけで、気になる飲食店のメニューからお店にまつわる意外な歴史まで、あらゆる情報を得ることができるといいなと思っています。例えば、小学館の本社がある神田神保町は、出版社や古書店が多いという特徴があるものの、その一つ一つまで詳しく知る人はあまり多くありません。こういった街を、今後ARタウンによって、今まで以上に身近に感じてもらえると理想的です。
プロジェクトは、AR技術に強いプレティア・テクノロジーズ社と共に進めた。(出典:プレティア・テクノロジーズ)
四竈
店舗にスマホをかざすという1つの行為だけでも、クーポンが出現したり、そのまま商品を注文することも可能だったり、さまざまな角度から街を楽しみ、新しい発見が得られる可能性を秘めていると思います。「ARタウン」は現在、日本のあらゆる地域の活性化を目標に本格的に始動していて、地方自治体とタッグを組みながらさまざまなコンテンツを提案していく予定です。

「街でコナンくんと出会えたら楽しい」作りたいのは、ポジティブな循環

これまでは、小学館が持つ作品のアニメ化や映画化のプロジェクトに取り組んできた四竈。そんな彼が理想とする「ARタウン」の今後とは?
四竈
まだまだ試験段階ではありますが、いずれは「ARタウン」にキャラクターを登場させ、地方自治体の活性化に応用できたらと考えています。そして、それこそが小学館がこのプロジェクトに取り組む意味かなと感じています。
「街でコナンくんと出会えたり、毛利小五郎が道端で酔っ払っていたりしたら、ワクワクしませんか?」(四竈)
「街でコナンくんと出会えたり、毛利小五郎が道端で酔っ払っていたりしたら、ワクワクしませんか?」(四竈)
四竈
ある地域に関連する人気作品のキャラクターをAR空間に登場させて、作品のファンに聖地巡礼を楽しんでもらうこともできますし、例えば、化石が発掘されるような地域なら、地層にデバイスをかざすと恐竜が浮かび上がるなど、『小学館の図鑑NEO』と連携したりしながら知的好奇心をくすぐる体験も提供できるはず。

地域としても、街の魅力を再発見することにつながりますし、観光客に普段訪れないところまで足を運んでもらうことで、地域全体の活性化も期待できます。

そして私たち小学館としては、その街に訪れる人が増えることで、今まで知らなかった人にコンテンツや作品の魅力を届けることができる。このように、みんなが楽しめて幸せになれるような、いい循環をつくっていくことが理想です。そうすることで、アニメ化や映画化とはまた違った形でコンテンツの新しい接点をつくることができると感じています。

作品の魅力を、世界に広めていくために

小学館がXR領域への挑戦をスタートしたのは、2015年ごろのこと。これまでの取り組みを、どのように未来へとつなげようとしているのか。
四竈
私自身、はじめてVRやARコンテンツに触れたとき、「なんて可能性に満ちた分野なんだろう」と、強い期待感を持ちました。2年前には、編集部と共に、バーチャルYouTuberの制作にトライしたこともあります。早い段階からトライアンドエラーを繰り返し、知見を積み上げていきながら、XRという領域を小学館のビジネスに活かすためにどうするべきか考えてきました。そして部署が立ち上がったからには、常に改善を続けていき、きちんと小学館の柱になるような事業へと育てていきたいですね。
「私は小学5年生からの4年間、海外で暮らしていたのですが、日本のアニメやコミック作品をきっかけにたくさんの友達ができました。次世代に向けて、そんな体験をもっと新しい形で創出していきたいんです」(四竈)
「私は小学5年生からの4年間、海外で暮らしていたのですが、日本のアニメやコミック作品をきっかけにたくさんの友達ができました。次世代に向けて、そんな体験をもっと新しい形で創出していきたいんです」(四竈)
四竈
ご存じのとおり、ARグラスが普及する時代はもうすぐそこまで迫ってきています。iPhoneが登場したときのように、みなさんのコンテンツへの触れ方や、暮らしそのものが大きく変わるでしょう。

新しい暮らしへと世の中が変化していく中で、私たちの心をXR領域に向けてオープンにしていくことも大切なことです。その際に、小学館に作品やキャラクターが豊富にあるということは、大きな強みとなるはずです。
(出典:プレティア・テクノロジーズ)

これからの100年に向けて

未来を生きる子どもたちのために、小学館として、個人として、大切にしたい想いとは?
四竈
XRはまだまだ発展途上の分野。アプローチの仕方によっては、かなり強烈な体験をもたらす場合があります。だからこそ、「社会にとっていいものかどうか?」という視点を欠かさず、ポジティブな体験を提供できるように心がけていきたいです。

特に小学館では、子ども向けのコンテンツが豊富ですから、XR領域によくあるようなインパクト重視のホラーコンテンツなどではなくて、「ドラえもんのひみつ道具を、現実の世界で使えたとしたら?」といったような、夢のあるコンテンツを積極的につくる方が、社会にもいい影響を与えられると信じています。
「出版社という側面はあるけれど、アウトプットは紙や出版にとらわれない。柔軟で『コンテンツメーカーであり続けたい』という姿勢が小学館にあるから、私も思いっきりチャレンジできるんです」(四竈)
「出版社という側面はあるけれど、アウトプットは紙や出版にとらわれない。柔軟で『コンテンツメーカーであり続けたい』という姿勢が小学館にあるから、私も思いっきりチャレンジできるんです」(四竈)
四竈
今後も前向きに挑戦する小学館の姿勢に共感してくださる方々と力を合わせながら、世の中に新しい風を吹かせる存在へと私自身も成長していきたいですね。
四竈 泰介
デジタル事業局 XR事業推進室